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お酒のお勉強

ただ、お酒をご提供するだけでなく、その文化についても知った上でご提供しようと思い、ちょっと勉強してみます。というよりも、筆者は、お酒に強くないので、出来るだけお酒を避けてきたということです。よって、現在でも、お酒を飲まないので、お酒を飲む理由や目的が分からないのです。飲酒文化が発展してきた理由も分からないのです。今までもほとんどお酒を飲んでこなかったですし、これからもほとんど飲まないはずです。なぜなら、飲みたいとは思わないですし、飲む理由も無いからです。若いころは、付き合いで飲まざるを得ない場合もありましたが、年を重ねるにつれて断ることに支障もなくなりました。社会的にも強要されることもなくなりましたし、酒宴の場も減りました。お酒を飲まれない方も多くなりましたので、お酒を飲まくても許される世の中になってきたこともあります。「お酒を美味しいから飲むのか?」「酔いたいから飲むのか?」「格好いいから飲むのか?」「付き合いでしょうがなく飲むのか?」など、当然、人それだとは思うのですが、「飲酒文化」の発展の理由を知りたいとは思います。
お酒は、日本ばかりではなく、世界中で課税(酒税)との戦いで、それは現在でも続いています。日本では、ビール系は、2018年の酒税法改正によって、2026年10月までに3段階で酒税が変更になります。既に2020年と2023年に改正していますので、2026年10月には、ビール、発泡酒、第3のビール(新ジャンル)の酒税が一律54.25円(350ml換算)となります。ビールは下がり、第3のビール(新ジャンル)は上がり、発泡酒へ近づくイメージです。ワインと日本酒は、2023年10月に35円(350ml換算)に一本化されました。ウイスキーは対象外で、約140円(350ml換算)です。実際には、もっと細かく分類されていますので、ざっくりとしたイメージです。酒類の課税については、これも、大まかなイメージですが、美味しくて売行きの良いお酒に多くの課税をして国の財源にするということです。そうなると高くなって売行きが悪くなるので、メーカーは味は落しても安価なお酒を造って、発売します。そうなると、特に景気の悪い時には、安価なお酒が売れるので課税して高くなっていくという感じです。例えば、ビールと発泡酒の違いは主に麦芽比率が低い(50%未満)のが発泡酒です。第3のビールは、麦芽を使用せず、ビールらしく造られたお酒です。麦芽は、ビールの味を左右する影響の大きい原料です。ただ、麦芽のコストが高いわけではありません。その麦芽比率によって税率を変えるということは、美味しいビールは税金が高く、不味いビールは税金が安いということです。当然メーカーは、それでも美味しくしようと技術開発をするわけです。そんな感じで、メーカーと課税とのいたぢごっこでしたし、今後もそんな感じで変わっていくのだろうと思います。ジュースよりも安価な商品もある缶チューハイの税金は現在28円ですが、2026年10月には7円増税となり35円になります。ただ、お酒を飲まない若者も世界的に増えてきているようですので、大きく変わるかもしれません。もしかしたら、飲酒量が減って税金を取れなくなると清涼飲料水にまで課税される時代が来るかもしれません。現在は、そんな歴史の中で、本当に美味しいお酒が少なくなっているように感じます。我慢して、安価で美味しくないお酒を飲んでいる感じです。ハイボールやチューハイなどで味をごまかしているのかもしれません。アルコールが含有されていれば、味は関係ないのかもしれません。ただ、アルコールさえ含有されていれば良いのであれば、エタノール(エチルアルコール、酒精)を飲んでおけば良いので、そうではないようです。出来れば美味しいお酒を飲みたいとの欲求はあるようです。景気の良い時は、少々高くても美味しいお酒が売れていました。例えば、サントリーでは、トリス→レッド→ホワイト→角瓶→オールド→リザーブ→ローヤルというヒエラルキー(階層・階級)が完成し、様々な世代にウイスキーが浸透していました。出世魚のごとく、就職するまではトリスやレッド、平社員のうちはホワイト、係長になってからは角瓶、課長でオールド、部長でリザーブ、そして役員になってようやくローヤルという具合に、昇進とともに飲むウイスキーの銘柄も出世していました。当時の大学生の多くがこの序列を頭に入れ、「俺もいつかはローヤルを飲める身分に」と夢を膨らませていました。しかし、バブルの崩壊、嗜好の変化、情報化社会による宣伝効果などの社会の変化も関係があるでしょうが、1984年のウイスキーの増税、1989年の酒税法改正(特級、1級、2級の廃止)により、ウイスキーの価格が高くなり、安価なビールや焼酎が増えました。ワインも1970年の輸入自由化、海外からの反発による関税の引き下げにより消費量が増えてきました。世の中のIT化も進み、情報量も増え、選択肢も増えたことで、これからは、本当に美味しいもの(高級志向)と、安価なもの(大衆志向)との二極化が進むのではないかと予想されています。また、アルコール離れも進んでいて、お酒を飲む飲まないの二極化も進んでいくと予想されています。ただ、過去の歴史を振り返ってみますと、人類の歴史と共にお酒の歴史もあるわけで、文化となっているわけなので、飲酒文化は、今後も廃れることは考えにくいです。しかし、アルコールは、「嗜好品」というよりは、「薬物」です。アルコールは人類が遭遇した最古の依存性薬物とも言われています。これは、「泥酔」「酩酊」によって人生をダメにしてしまう方も多くいらっしゃり、「アルコール依存症」は完治しないとも言われていることからも明らかです。昔は、お酒は、薬と考えられている時期もありました。古代中国の漢書には、「酒は百薬の長」と書かれています。1330年頃にまとめられた随筆、吉田兼好の徒然草には、「百薬の長とはいえど、よろずの病は酒よりこそ起これ」と記されています。つまり「酒は百薬の長とはいうが、あらゆる病気は酒から起こる」ということになります。また、徒然草の中では、「飲み会に行くのが嫌なわけじゃなく、嫌な奴と飲みに行くのが嫌なのだ」「無理な飲酒を強要する奴は地獄に落ちろ」と書いていたと一部では話題にもなりました。つまり、現代と同様、昔もお酒を飲むと自制が効かなくなり、アルコールハラスメントがあったということです。
医学的には、アルコールには、脳内で楽しさや心地よさといった感情を生み出す「ドーパミン」という神経伝達物質の分泌が促されます。本来は、「ドーパミン」が分泌されると、「楽しい」という感情を抑制し興奮し過ぎるのを防いで、気持ちを平静に保つための脳内物質「GABA(γ-アミノ酪酸)」なども分泌されて抑制されますが、アルコールは気持ちを平静に保つ脳内物質の分泌を抑えたり、そのはたらきを鈍らせたりしてしまいます。そのため気分は、どんどん盛り上がっていく一方となるのです。さらに、アルコールは気持ちを高揚させる「ドーパミン」の分泌を促す一方、「セロトニン」の分泌を促す作用もあります。「セロトニン」は、過剰な動きや不安、恐怖といった感情を抑え、気持ちを鎮静化させるためにはたらく脳内物質です。そのため、ストレスを抑えるはたらきがあり、うつ病の治療にも利用されています。また、体を緊張させたり、心拍や血圧を上げるといったはたらきをする副腎皮質ホルモンやノルアドレナリンなどの分泌を抑制することもわかってきています。つまりアルコールには、楽しい気分を盛り上げると同時に、ストレスにさらされて緊張した心身を解きほぐす、という2つのはたらきがあると考えられるのです。アルコールがドーパミンの放出に影響を与えるのは、最初の約20分だけともいわれています。つまり、飲み過ぎると、自制が効かなくなるということです。
一つの個人的な結論としては、人は、アルコールを薬物として欲するということです。ラットの実験でも、ストレスの多い実験群には、飲酒量が増えるようです。貧しい国や治安の悪い国、戦争中などは飲酒量が多いようです。つまり、ストレス解消の手段の一つでもあるということです。日本の高度経済成長期時代を支えてきた企業戦士たちが好んでウイスキーを飲み、日本を発展させてきたように、仕事で頑張って、酒を飲んで息抜きをして、また、明日からの仕事のための活力とするためのお酒は、決して悪いものではありません。現在の日本の経済が低迷しているのと飲酒量が減少しているのは関係があるのかもしれません。また、現在の先進国のように、ストレスを解消する手段の選択肢が多い場合には、飲酒欲求に結び付かない場合も多いようです。

現在は、お酒を飲まない人「ソバーキュリアス」が増えているといいます。そもそも「ソバーキュリアス」とは、「Sober Curious=シラフ+好奇心、飲まないことに興味を持つ」という新しい概念です。USの調査では、程度の差はあれアメリカ人消費者の約4割が、「ソバーキュリアスなライフスタイルを実践している」と回答しているとのデータもあるようです。世界中でソバーキュリアスな人が増えるにつれ、堂々とお酒を「飲まない選択」ができる場所や機会が増え、新たなコミュニティやマーケットとしても注目が高まっています。そんなソバーキュリアスという言葉の生みの親であるイギリス出身の作家でジャーナリストの「ルビー・ウォーリントン」も、かつては週4、5回ペースでお酒を飲み、週末はバーやクラブでナイトライフを楽しみ、公私を通してお酒とは切っても切れない関係だったようです。そんな彼女が提唱した「ソバーキュリアス」とは、飲酒をするとかしないとか、良いとか悪いとかではなく、「TPO、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場面)」に合わせて、飲酒のメリットがあるのか?どの程度の量が適当なのか?などを考え、飲酒のメリットがないのであれば、飲酒をしないという選択肢が良いのではないか?ということのようです。お酒の代わりに、ノンアルコールビールやノンアルコールカクテルなどといったノンアルコール飲料を選択した方が、酔うこともなく、その時間を友好的に使うことも出来るのではないか?ということのようです。現在の若者の中には、飲酒をすることよりも、SNSやゲームなど、他のことでストレスを解消しているようです。ただ、それらには、正解も不正解もなく、各々の生活環境や人生設計、目標などにもよることなので、各々が選択することであろうと思います。実際、ノンアルコールバーやノンアルコールメニューを増やしているBARも増えており、BARでの飲料の選択肢も増えているようです。お酒を飲まなくてもBARに行っても良いということです。実際、筆者もそうです。師匠のBARに行っても、お酒を飲んだことがありません。BAR文化も変化していくということです。



お酒についての理解を深めるために整理してみました。勉強途中ですので、参考として下さい。適時修正してまいります。
文化を理解する目的で、一部、その歴史も踏まえて整理してみました。
ここでは、お酒全体の歴史、法律上の定義、適量のアルコール摂取量などについて整理してみました。

■お酒の歴史の推測

■お酒の起源

以下は一部は推測です。食べ物は生きていく上で必要不可欠なものです。食物の歴史は狩猟採集から貯蔵、農耕牧畜と貯蔵へと変化していきます。今から約1万年前の新石器時代に農耕牧畜が始まりました。火の使用の始まりは、約180万年前の原人ホモ・エレクトスの時代といわれてますので、現在の人類(ホモ・サピエンス)が誕生した約20万年前には、火を使用していたことになります。世界における地域差はありますが、石器時代は約1万年前~約2300年前まで、青銅器・鉄器時代は約2300年前~といわれています。また、樽の出現は、日本における樽の権威者で、サントリーの樽職人であった加藤定彦氏によると、「樽は紀元前1000年に古代バビロンやエジプトでつくられた」とあり非常に古い歴史をもっていますが、ヨーロッパでの記録は紀元1世紀のローマの歴史家が「アルプス渓谷で発明された」としているのが最も古いです。スコットランド・ニューステッドのローマの遺跡から出土した木製の桶(紀元1~2世紀)は、樽と同じ技術で作られています。つまり約2000年前には木製の樽も出現しているとされていますので、約1万年前頃から徐々に、採取や栽培した大麦、小麦、トウモロコシ、米、さとうきび、葡萄、林檎、いちごなどの穀類や果実類を土器や石器などの壺や木製の樽に入れて保存していたはずです。保存していたことを忘れて放っておくと腐ってしまいます。そうすると条件が揃えば醸造酒ができます。当時は、上水設備や冷蔵庫はないので、水ですら貴重だったと思いますので、保存水の代わりだったかもしれません。寒い時は、醸造酒を温めて飲んだと思います。これも条件が揃えば蒸溜されたかもしれません。これが、醸造酒と蒸溜酒の始まりだと推測されます。原料で分類すると、下記の通りです。他にもありそうですが、どうも、芋類などの糖分の高い原料は、上手く醸造できなかったり、出来た醸造酒はとても不味いようで発展しなかったようです。例えば、芋焼酎は、旧式の乙類と新式の甲類と区分されますが、旧式の乙類は本格焼酎といって、室町時代末期から作られるようになり、原料に米とサツマイモを使用して発酵後、単式蒸溜器にて蒸溜します。一方、新式の甲類は、連続式蒸溜機が輸入された明治末期から作られるようになり、原料にサツマイモのみを使用して発酵後、連続式蒸溜機を使用して蒸溜します。つまり、醸造は発酵後に熟成する過程がありますが、焼酎は、熟成せずに発酵後すぐに蒸溜する点が異なります。よって醸造酒としては商品化されていないことになります。これも、美味しくないからかもしれません。昔の人たちは、いろいろな原材料を試していく中で、生き残ったお酒が、現在にも生き残り、より美味しくするために試行錯誤をして、技術を開発し、生きていくための「水」から「嗜好品」としての「お酒」へ変化してきたのだろうと推測します。お酒は、人類が生きていく上で、必然的に自然発生的に生まれて、嗜好が加わって現在に至っていると思うと歴史と伝統と文化を感じます。そして、今後も変化していくのだろうと思うと、未来にも思いが馳せます。そんなことを感じながら、お酒を嗜(たしな)んで頂けると嬉しく思います。
■(原料)    (醸造酒)   (蒸溜酒)
・大麦       ビール     麦焼酎・ウイスキー
・トウモロコシ   チャチャ    ウイスキー
・葡萄       ワイン     ブランデー
・林檎       シードル    カルヴァドス
・米        日本酒     米焼酎、泡盛
・蜂蜜       ミード     ミードネクター

■お酒の歴史(世界)

最古のお酒は、ワイン(果実酒)ともミード(蜂蜜酒)ともいわれます。
下記に触れます「ミード(蜂蜜酒)」が最古のお酒といわれる場合もありますが、世界のあらゆるお酒の中で、最も古いとされるものが果実酒(ワイン)です。ワインの歴史は非常に長く、紀元前8000年の頃に幕を開けました。最初は人間の手を介さず、ブドウが自然に発酵したものを飲んでいましたが、紀元前7000年〜紀元前5000年頃には意図してワインを造るようになります。紀元前4000年頃にはメソポタミア地方(現在のイラク、ペルシャ湾へ注ぐチグリス川とユーフラテス川の間の平野、ペルシャ湾と地中海の間)のシュメール人(人類最古の文明のひとつメソポタミア文明を築いた民族、楔形文字を発明)によって飲まれていたようです。次に古いとされるのは、ビールです。こちらも同じくメソポタミアで、紀元前3000年頃にはつくられていたという記録が残っています。そして、ウイスキーやスピリッツなどの蒸溜酒の登場は、これらに比べるとずっと遅くなります。最初の記録は、11世紀初めの南イタリアです。医師の手によってつくられた医薬品用のアルコールだったそうです。わが国固有の日本酒は、8世紀頃(奈良時代)に製造方法が確立されていました。しかし、当時は庶民が自由に飲めるものではなく、祭礼・正月・慶事などの際に飲むものでした。現在でも、神前へのお供えや、結婚式の三三九度などに、その風習が残っています。
■お酒の歴史(日本)
日本へは、ワインが16世紀中ごろ、ビールが18世紀初めごろ、ウイスキーが19世紀中ごろに伝わったとされています。「和蘭問答(1724年)」という書物には、日本で初めてビールを飲んだとされる人の感想が載っています。そこには「麦酒給見(たべみ)申候処、殊外悪敷物にて、何のあぢはひも無御座候・・・(ビールを飲ませていただきましたが、思いのほかまずく、まったくおいしいものではありませんでした。という意味)」と記されており、ビールの苦さは不評をかったようです。

■ミード(蜂蜜酒)の概要

「ミード (Mead) 」は、日本ではお酒にかなり詳しい方以外ほとんど知られていません。西洋ではたびたび神話や歴史物語、詩にも登場してくる伝統的で神秘的なお酒です。洋酒輸入会社等が一部取り扱っているのみで、大きな銘酒店でもほとんど取り扱われていません。現在、ミード(蜂蜜酒)の市場は東欧やロシアが主です。自家生産される地域は中東、エチオピアなどアフリカ諸国、中米からブラジルにかけて点在しています。
日本でも生産されており、日本酒の造り酒屋が参入したり、蜂蜜酒愛好家が新規に酒類製造免許を取得したりしています。日本の酒税法では、法律改正により2006年5月より分類が変更され、醸造酒類のその他の醸造酒に該当します。欧米では製法がワインに似ていることから、「ハニーワイン」(Honey Wine) と称される場合もあります。
ミードと結婚には親密な関係があります。特にゲルマン人からの習慣で、「Honeymoon(ハネムーン・蜜月)」とは、婚礼から1カ月の間、新婦がミードを造り、それを新郎と仲良く飲み、そしてその親族縁者が新婚カップルを祝うことを意味します。
※ゲルマン人(民族)とは、古代(石器時代)から中世期(5世紀から10世紀)にかけて、中央ヨーロッパからスカンジナビア半島にかけて居住した民族のことです。ドイツを英語では、「German(ジャーマン)」と言いますが、「ジャーマン」は、この「German」(ドイツ語でゲルマン)の英語訛です。
■ミード(蜂蜜酒)の味
蜂蜜酒と聞くと「蜂蜜のような甘いお酒」をイメージするかもしれませんが、実際はちょっと違います。そのテイストは、ビールや白ワインに似ているといわれており、国によってもそのテイストは変わってきます。
「ビールのご先祖のようなもの」と称されることもあるなど、ビールとの類似点が多々あります。さっぱりとして、ほのかに蜂蜜の風味を感じるようなビールに近い味わいの商品も少なくはありません。また、色味が濃く味わいも濃厚なタイプのミードは、酸味が立った白ワインのような味わいのものもあります。アルコール度数も銘柄により大きく異なるミードですが、その多くが10%前後の仕上がりになっているようです。しかしながら、5%程度の弱いアルコールのものから70%を超えるアルコール度数のものまで、ミードによって様々なので飲む際はチェックする必要があります。
■ミード(蜂蜜酒)の製造方法
ミードの製造方法は、蜂蜜と水と酵母菌を発酵させてできあがる「醸造酒」で、ワインや飲料アルコールに蜂蜜を溶かした「ハニー○○酒」とは異なります。アルコール度数はワイン並みで、すっきりした風味のドライタイプから濃厚な甘口、そしてシャンパンのようなスパークリングまでバラエティーに富んだテイストが楽しめます。見た目や風味も白ワインやビールにによく似ています。
■ミード(蜂蜜酒)の歴史
ミード(蜂蜜酒)は農耕が始まる以前(約1万年前)から存在したとされています。天然の純粋はちみつは、殺菌作用が強く、カビや菌が繁殖することができません。そもそも、水分量も少ないので、繁殖する隙がないのです。また、純粋はちみつは糖度がかなり高いために、バクテリアが繁殖することもできません。そのため、天然の純粋はちみつは腐ることがないのです。水と蜂蜜を混ぜて放置しておくと自然に酒の成分であるアルコールになる(アルコール発酵)ことから、発祥は人類がホップやブドウに出会う前の旧石器時代末にまで遡るといわれています。新石器時代のビーカー文化(紀元前2600年ごろから紀元前1900年ごろまでの、鐘状ビーカーと呼ばれる独特の大型広口杯が広く分布した)の遺跡では、蜂蜜酒を飲むための土器と考えられる遺物が発見されています。青銅器時代(紀元前3300年~紀元前1200年)に蜂蜜の消費量が増加したことから、蜂蜜酒の生産がこの頃に拡大していたと推測されています。また、古代ケルト文化(期限前1500年~紀元前200年)の人々には蜂蜜酒は「不死の飲み物」とされ、その神話と強い結び付きがあります。製法が発展するに従い湯や他の植物を使うようになり、ビールに近い味になっていきます。蜂蜜酒の製造は空腹を満たす以上の動機、酔いを分かち合うという目的を与えました。酩酊による非日常感は、人々の絆を強めるといった霊的交流や宗教、儀礼行為へとつながっていきました。フランスの社会人類学者であるクロード・レヴィ=ストロースは、蜂蜜酒の発明を、「自然から文化への移行であり、人間の行動を決定づける行為である」と分析しています。
※アルコール発酵とは、糖を分解して、エタノールと二酸化炭素を生成し、エネルギーを得る代謝プロセスであり、酸素を必要としない嫌気的反応(嫌気発酵)です。蜂蜜は糖度が80%以上になると永久的に変化しないが、水分が加わることで、微生物によって発酵します。ハチは、糖度が80%以上になるようにして蜂の巣の中で蜂蜜を保管しています。
■ミード(蜂蜜酒)からビール(エール)へ
ビールやワインなどの他の醸造酒が台頭するに連れて蜂蜜酒は日常的な飲み物ではなくなっていきます。蜂蜜酒に代わり一般市民が飲むために穀物から醸造されるエール(この頃は、ホップを使用しないものの意、現在のエールビール)が開発され、時代と共にビールとなっていきます。ホップとは、大麻などと同じアサ科のつる性多年草で、現在の主要な原料の一つです。ビールの苦味、香り、泡にとって極めて重要で、雑菌の繁殖を抑え、ビールの保存性を高める働きがあります。現在、一般的に呼ばれる「麻(あさ)」は、植物表皮の内側にある柔繊維または、葉茎などから採取される繊維の総称です。狭義の麻(大麻)と、苧麻(からむし)の繊維は、日本では広義に麻と呼ばれ、和装の麻織物(麻布)として古くから重宝されてきました。特に苧麻(からむし)は、自生もしており、繊維が丈夫で大麻よりも加工し易いことから、一般的に麻の服といえば、苧麻(からむし)が原料といえます。また、大麻は、栽培、所持、使用等が禁止されています。麻薬(昏迷・昏睡、痛みに対する無感覚を誘発する化学物質の意)の一種でもあるので、厳罰主義の大麻取締法は、終戦後の1948年に、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の指示によって制定されました。ちなみに、2023年の改正大麻取締法により、2024年から「医療用大麻利用の解禁」となりました。

■ビール

ここで、ビールについて触れておきます。やはり、お酒といえば「ビール」を思い浮かべる方が多いともいます。実際、ビールは世界で最も飲まれているアルコールです。2位のワインの倍近くの市場規模(額)があります。実際、水とお茶に次いで、ビールは世界で最も人気のある飲み物です。2022年の世界のビール生産量は前年比1.3%増の18.9億ヘクトリットル(1ヘクトリットル=1hl=100リットル)と微増に終わりました。しかし、市場は2019年に生産量が19.1億ヘクトリットルでピークに達したパンデミック前の水準にはまだ戻っていません。ビールメーカーは消費者の喉の渇きを満たそうとしているため、このカテゴリーも消費者の嗜好に合わせて進化しています。加えて、プレミアムビールや低カロリービールに対する全体的な需要、クラフトビールの人気の高まり、新興国における流通網の継続的な拡大はすべて、今後数年間にわたり世界のビールセクターの成長を牽引し続けると予想されています。
■ビールの本場
ビールの本場と一言でいっても特定できないほどあります。飲む方の好みにもよります。一般的に挙げられるのは、ドイツ、イギリス、チェコ、ベルギー、アメリカが多いです。各国の特徴について簡単に触れておきます。
■ドイツ
世界をリードするビール大国ドイツです。
「ビールの本場」と聞いて、誰もが真っ先に思い浮かべるのがドイツという方も多いです。
ドイツは、1516年に発令された「ビール純粋令」によって、近代ビールの礎を築くなど、ビール造りの長い歴史と伝統を有しています。世界最大のビールの祭りとして知られる「オクトーバーフェスト」も開催され、ビールの個人年間消費量も世界トップクラスであるなど、名実ともにビール大国として、その名を馳せています。
ドイツのビール造りでは、日本のように大手ビールメーカーが占める割合は大きくありません。小・中規模のブルワリーがドイツ全土に点在し、上面発酵(エール)から下面発酵(ラガー)まで、じつに多彩なビールが造られています。
なかでも、ドイツならではのビアスタイルと言えるのが、小麦を使った「ヴァイツェン(エール)」や、濃厚な黒ビール「ボック(ラガー)」や「アルト(エール)」、淡色麦芽を使った「ケルシュ(エール)」などです。
また、代表的な銘柄も数多くありますが、国王やドイツ初代首相も愛したとされる「ラーデベルガー・ピルスナー」や、世界的に有名なビール評論家、故マイケル・ジャクソン氏も称賛した「ヴェルテンブルガー・ヴァイスビア・ドゥンケル」などが有名です。「ヴェルテンブルガー」ビールは、ビショーフスホフ醸造所傘下のヴェルテンブルグ修道院醸造所(南ドイツ)で醸造されています。同醸造所は、7世紀頃、バイエルン州・ドナウ河畔のケールハイムの地で創建されたベネディクト派の修道院で、⻄暦1050年からビール醸造をし始めたとの記録があり、現存する修道院醸造所としては最古のブランドといわれています。修道院のビールといえばトラピストビールが有名ですが、ヴェルテンブルク修道院はベネディクト会の修道院につき、「ヴェルテンブルガー」もトラピストビールではありません。トラピストと名乗れるのはトラピスト会系修道院で造られているもののみです。
シトー会(シトー修道院、ベルナルド会)は、カトリック教会に属する修道会です。ベネディクト会から派生しました。
改革を希求したフランス、ブルゴーニュ地方出身の修道士・「モレームのロベール(1027年 – 1111年)」が1098年、フランスのサン=ニコラ=レ=シトーに設立したシトー修道院が発祥です。モレームはフランス東部、ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏コート=ドール県にあるコミューン(地方自治体の最小単位、村、町など)をさします。シトー会は「聖ベネディクトの戒律」を厳密に守り、彫刻や美術による教示を禁止した点で、既存のベネディクト会修道院、とりわけクリュニー会(戒律のうち祈祷を重んじ、豪華な典礼を繰り広げ貴族的とも評された)と対峙する立場をとりました。服装面にもその姿勢は現れており、壮麗・華美なクリュニー会と異なって染料を用いない白い修道服を着たことから、シトー会士は「白い修道士」とも呼ばれます。シトー会は戒律の中でも労働と学習を重んじ、自ら農具をとり農民らを指導して、森林に覆われていた北フランスの開墾や新農法の普及を行いました。
ロベールは元々クリュニー会の修道士であり、モレーム修道院院長でしたが、「聖ベネディクトの戒律」をめぐって修道士の間で対立が起き、内部分裂の結果ロベールはシトー修道院を設立しました。その後、1099年にロベールが教皇ウルバヌス2世の命によりモレーム修道院に戻ると、シトーのアルベリックが後任として選出されました。アルベリックが死去すると、ステファン・ハーディングが後を継ぎました。シトー会は、この3人を創立者としています。モレーム修道院は、モレームのロベールによって1075年に創建されたベネディクト会の旧修道院で、フランスの東部ブルゴーニュ地域圏、コート=ドール県のモレームに存在していました。しかし、フランス革命や第二次世界大戦で、そのほとんどが破壊され、現在は、遺構としてフランス歴史的記念物として残っています。
シトー会が発展したのはクレルヴォー(ルクセンブルグ大公国の北部、ベルギーとの国境近く)のベルナール(ベルナルドゥス、聖ベルナール、ベルナルド)の功績が大きく、1115年にクレルヴォー修道院が創立されるとベルナールが院長に任命され、クレルヴォー修道院はシトー会の重要な拠点となりました。シトー会の別名であるベルナルド会の呼称は、このベルナールにちなんでいます。ベルナールはシトー会のみならず、カトリック教会およびヨーロッパ全体に非常に大きな影響力をもち、それに伴いシトー会も大きな発展を遂げました。しかし、ベルナールの死後、シトー会は徐々に衰退していき、また国際紛争、疫病の流行などの社会情勢から地域ごとのグループに分裂していきました。さらに、フランス革命によって決定的な打撃を受けて一時はフランス国内から姿を消しましたが、革命終了後に亡命していた修道士がフランス国内に戻ると復興し、現在のシトー会が作られました。このとき、フランスノルマンディー地方のトラップ修道院(ラ・グランド・トラップとしても知られるラ・トラップ修道院は、フランスのオルヌ県ソリニー=ラ=トラップにある修道院で、トラピスト修道院の起源として知られ、トラピスト会の名前の由来)で行われていました、厳格な規律を元にしたのが厳律シトー会(トラピスト会)です。現在は、厳律シトー会は独立した修道会となっており、(寛律)シトー会(ゆるやかな修道院連合体を形成、寛律シトー修道会、聖なるシトー修道会)と分かれています。どちらにも属さない修道院もあります。
■イギリス
イギリスで独自に育まれてきたパブ文化が有名です。イギリスでは独自のパブ文化が根づいており、ビールが日常的に飲まれています。なかでも醸造が盛んなのが、イギリスが発祥とされる上面発酵のエールビールです。「ペールエール」や「ポーター」「スタウト」と呼ばれるビアスタイルが人気を集めています。
こうしたビールは、キンキンに冷やして飲むよりも、少しぬるめの温度で、香りをたのしみながら飲むスタイルが一般的です。
イギリスのパブで飲まれているビールも一様ではなく、かなりのバリエーションがあります。その特徴は地域によっても異なりますが、代表的な銘柄としては、優雅な飲み心地が特徴の「ロンドン・プライド(エール)」や、英国王室御用達の「バス・ペールエール(エール)」などが有名です。その他にも「ホブゴブリン(エール)」や「ニューキャッスル ブラウンエール(エール)」など、数多くの銘柄があります。
■チェコ
日本でもおなじみのピルスナービールの本場です。
チェコは、下面発酵(ラガー)のなかでも主流となっているビアスタイル、ピルスナービールの発祥の地として知られています。「ピルスナー」の語源は、チェコのボヘミア地方にあるピルゼン市が語源とされているように、まさに「ピルスナーの本場」といえます。
ピルスナーは世界的にも人気のビアスタイルで、日本で「ラガービール」として発売されているビールの多くが、このピルスナースタイルです。
また、チェコは一人当たりのビール消費量が年間で188.5リットル(2022年)と、2位のオーストリアの101.2リットルに大差をつけてダントツの1位です。1993年から30年連続で1位となりました。
チェコを代表ビール銘柄として、まず挙げられるのは「ピルスナーウルケル(元祖ビルスナ―の意、ラガースタイルのビールの醸造方法の基礎)」です。ピルスナーが誕生したピルゼン(プルゼニ、チェコ西部の都市)市にある市民醸造所で、今もなお当時の製法を守って造られています。
その他にも、アメリカの代表的なビールブランド「バドワイザー」の名前の由来となったとされる「ブドヴァイザル・ブドヴァル(ブデヨビツキ ブドバー)」なども有名です。但し、「バドワイザー」の商標権については、アンハイザー・ブッシュ社(アドルファス・ブッシュの会社)とブドヴァイゼル・ブドヴァル社との間に訴訟が起きており、今もなお、決着がついていません。大雑把にいうと、欧州ではバドワイザーという名前は使えず、「Bud(バド)」や「Busch(ブッシュ)」という名前で売られています。
バドワイザーは「ブドヴァイゼル (Budweiser) 」が語源です。チェコ南部にブドヴァイス (Budweis、チェスケー・ブジェヨヴィツェ) という地名があり、そこの原産のビールという意味の「ブドヴァイゼル」が名前の由来です。ブドヴァイス地方のビールの美味しさに感銘を受けたドイツ系アメリカ人のアドルファス・ブッシュ(アンハイザー・ブッシュ社設立者のひとり)が、1876年に発売したビールに「バドワイザー(Budweiser)」と命名して、アメリカで商標権を獲得します。ちなみにアドルファス・ブッシュと「ブドヴァイゼル」との間には何の関係もありません。いま中国の企業が日本の産地を商標登録することが問題化していますが、それと似た状況です。そして1895年、チェコにブドヴァイゼル・ブドヴァル社が設立されます。それ以来「Budweiser」の商標を巡って、アンハイザー・ブッシュ社(アドルファス・ブッシュの会社)とブドヴァイゼル・ブドヴァル社との間に訴訟が起きているのです。2009年の3月26日にも「一部欧州で『バドワイザー』商標の使用禁止」というニュースがありましたが、実際に欧州ではバドワイザーという名前は使えず、「Bud(バド)」や「Busch(ブッシュ)」という名前で売られています。アンハイザー・ブッシュ社は、商標権の買い取りをブドヴァイゼル・ブドヴァル社(ブジェヨヴィツェ・ブドヴァル国営会社)に申し出ているが、拒否されて続けています。
■ベルギー
ベルギーはドイツと並び称されるビール大国です。
ベルギーは、決して大きくはない国土に、500以上ものビール醸造所を有しています。ドイツと並んでビールの一大生産国として知られ、輸出ではドイツをしのぐほどのビール大国です。
ベルギーのビールで特徴的なのが、古くから伝わる製法で修道院でのみ造られる「トラピスト」と呼ばれるビールや、培養酵母を用いず、自然発酵で造る「ランビック」と呼ばれるビールです。歴史と伝統を大切にしたビールが多く造られています。
ベルギーを代表するビールの銘柄としては、世界的な人気を集めるホワイトビールの「ヒューガルデン」や、さわやかな飲みごこちが人気のラガービール「ステラアルトワ」などが有名で、その他にも現地には800を超える銘柄が存在します。ベルギーの北西、運河で北海へつながる街、水の都ブルージュを代表するビール「ブルッグス ゾット」も有名です。ブルッグス ゾットは、ベルギーの西フランダース州(ウェスト=フランデレン州)ブルージュの街に唯一の醸造所である「ドゥ・ハルヴ・マーン醸造所」で造られています。ハルヴ・マーンとはオランダ語で半月(ハーフ・ムーン)という意味。醸造所の歴史はとても古く、1564年には町の台帳に名前が残されています。
1856年にアンリ1世として知られる、マース一族のレオン・マースが醸造所の所有者となりました。当時、醸造したビールは樽のみによって配下されていました。
1867年にアンリ1世が亡くなると、息子のアンリ22世たちが後を継ぎました。彼らは産業革命のさなか、最新の技術を学ぶためにイギリスに渡り、帰国後はスタウトやペールエールなど英国スタイルのビールの醸造をはじめました。
1905年にアンリ2世たちが若くして亡くなると、その後は彼らの妻たちが醸造所の運営を続け、第一次世界大戦の困難な時代を乗り越えることができました。
第一次世界大戦後の1919年、醸造所の運営はアンリ3世が受け継ぎました。彼はドイツに渡り、下面発酵のラガーの技術を学びました。ブルージュでもラガーを生産することを決意し、1928年には醸造を開始しました。続いてボック(ビールスタイルのひとつ、上面発酵も下面発酵もある)の生産も開始し、大きな成功をおさめました。また彼は馬を使って顧客のところに配達するシステムを構築し、顧客の支持を得ました。
1950年代、アンリ4世の時代も醸造所と配送システムは成長を続けましたが、1970年代には人々の生活スタイルが一変し、顧客は車に乗ってスーパーなどにビールを買いに行くようになりました。
1981年、アンリ4世の娘ヴェロニクは新たなビールを世に送り出しました。ブルージュに聖アルノーの銅像が建てられたのを記念して造られたこのビールは、他のビールよりも強く、「ストラッフェ・ヘンドリック(強いアンリ)」と呼ばれる由縁となりました。
1988年にはリヴァ・グループのデ・スプレンテル一族に買収され、醸造所の名前もハルヴ・マーンからストラッフェ・ヘンドリック醸造所になりました。メインの銘柄であるストラッフェ・ヘンドリックはその後2002年までブルージュで醸造されました。その後も売却や権利移転など紆余曲折がありましたが、2009年には再びブルージュ(ドゥ・ハルヴ・マーン醸造所はブルージュで唯一の醸造所)で醸造されることになりました。醸造所は町の人々や観光客に解放され、見学コースやカフェはとてもにぎわうようになりました。特に醸造所の屋上からはブルージュの町が一望でき、最高の展望です。
2002年、リヴァ・グループのデ・スプレンテル一族が醸造部門を売却しました。この時点でストラッフェ・ヘンドリック醸造所の操業も停止されることになりましたが、ストラッフェ・ヘンドリックブランドとそのレシピの権利はリーフマンス・ブルワリーズグループ(2007年倒産)が引き継いで所有し、ベルギーの西フランダース州にあるデンテルゲム(リヴァ醸造所)で造られることになりました。3年間の醸造停止期間を経て2005年、ヴェロニク夫人の息子、ザヴィエル・ヴァネスタ(6代目にあたります)が醸造所を買い戻し、名前もかつてのドゥ・ハルヴ・マーン醸造所として醸造を再開しました。彼の父方の一族であるヴァネスタ一族も、1983年までブルージュでグーデンブーム醸造所を操業していた醸造一家でした。彼は独自のレシピを開発し、「ブルッグス・ゾット」として販売を開始しました。かつてブルージュの町に皇帝を迎え入れる際、人々は精神病院を建てるための資金援助を依頼するため派手なパレードを行いました。すると皇帝は、「今日馬鹿にしか会っていない。ブルージュの町こそ精神病院だ!」と言いました。以来ブルージュの人々は「ブルッグス・ゾット(ブルージュの馬鹿)」と呼ばれるようになりました。
また、近年では若者を中心に、さまざまなフレーバーが人気のフルーツビールの生産国としても有名で、数多くのフルーツビールが造られています。
■アメリカ
アメリカのビールとして、まず名前が挙がるのが「バドワイザー」や「クアーズ」といった銘柄です。これらを手掛ける大手ビールメーカーが大きなシェアを占めてきたのは日本と同様です。このため一般的に「アメリカンビール」といえば、大手ビールメーカーの手による軽いピルスナースタイルの「アメリカンラガー」です。トウモロコシなどの副原料を多く用い、またホップの苦味を抑えた、清涼感のあるビールが主流でした。

■ビール(エールとラガーの違い)について
現在は、エールビールにもホップは使用されており区別はありません。1516年にバイエルン公ヴィルヘルム4世(バイエルン公国、現ドイツ南東部)が制定したビール純粋令により、「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」となりました。
現在のビールは、発酵方法により大きく2種類(エール、ラガー)に分けられます。
「ラガー」は、下面発酵によって造られたものを差します。下面発酵とは低温で長期間発酵させる方法。酵母が麦汁の下面へ沈んでいくために、下面発酵と呼ばれているのです。下面発酵の特徴は低温で発酵させるため、雑菌があまり繁殖することなく、つねに品質を一定に保ったままビールを作ることができることです。最近の大量生産されるビールには、もってこいの方法です。
「エール」は、上面発酵によって造られます。下面発酵よりも歴史の古い造り方で、やや高温であまり時間をかけずに発酵させる方法です。こちらは酵母が麦汁の上に浮き上がっていくため、上面発酵と呼ばれています。大量生産には向きませんが、味わい深さと飲みごたえで根強い人気があり、クラフトビールも多くの種類の「エール」が造られています。
ちなみに発酵には、培養されたものではない自然の酵母を使った自然発酵という造り方もあります。天然の酵母で長期間自然発酵させて造る自然発酵ビールで、自然の酵母を使うという手間から、現在はあまり多くは造られていませんが、ランビックやグーズなどの、海外で古くから造られている伝統的なものや日本の醸造所が造る革新的なものなどさまざまなものがあります。

■エールビール
「エール」は、上面発酵で醸造されるビールを指します。下面発酵(発酵期間7日~10日)よりも歴史の古い造り方で、やや高温であまり時間をかけず(発酵期間3日~4日)に発酵させる方法です。こちらは酵母が麦汁の上に浮き上がっていくため、上面発酵と呼ばれています。大量生産には向きませんが、味わい深さと飲みごたえで根強い人気があり、クラフトビールも多くの種類の「エール」が造られています。日本ではまだまだ少数派ですが、徐々にいろいろなエールビールが造られるようになってきており、エール専門のメーカーもできるなど注目度上昇中です。大量生産向きのラガービールとは違って少量多品種が中心のエールビールは、種類(スタイル)が多く、さまざまな香りや味わいが楽しめるのも魅力です。時間をかけて香りや味を堪能する新しいビールの楽しみ方を、エールビールで開拓してみることも良いかもしれません。
「エールビール」とは、エール酵母(上面発酵酵母)を使って造られたビールのことです。すっきりしていてゴクゴク飲める日本では一般的なビール(ラガービール)とは違って、ワインのように色や香り・味わいを楽しみながら飲むタイプのビールです。ラガービールが主流の現在では意外に思う方も多いでしょうが、実はエールビールの歴史はラガービールより古く、長い間親しまれてきました。イギリスのように今もエールビールが主流という国もあります。エールは飲みごたえのある深い味わいがあるため、じっくりビールを楽しみたい人に向いています。イギリスビールとひとくちにいってもペールエール・IPA(India Pale Ale)・スコッチエールなどの種類があるので、銘柄ごとに個性的な味わいを楽しめます。修道院(アビー)ビールもエールになります。
●ペールエール
ペールエールは、イギリス発祥の金色〜銅色のビールで、ホップやモルトの豊かな香りが特徴です。 イギリスの伝統的なスタイルですが、アメリカに渡ってホップの華やかな香りがするアメリカンペールエールが誕生し、世界的に人気となりました。イギリスのバートン・オン・トレントという町から誕生したスタイルで、「ペール」=「淡い」の意味で、当時は濃色ビールばかりだったため、ペール(=淡い)エールと名付けられました。イギリス伝統の「バス・ペールエール(英国バス醸造所)」が有名です。大きな特徴である華やかな香りを楽しむため、キンキンに冷やし過ぎないのがおすすめです。飲み口の膨らんだグラスに注げば、香りが立ってより美味しくなります。なお、エールの香りを楽しむためにイギリスでは常温で飲むのが一般的です。エールの風味は冷やしすぎると感じにくく、10℃前後の常温で強く感じられるといわれています。ラガーに慣れた人はぬるいと感じるかもしれませんが、イギリスビールを飲む際は小ぶりのグラスで少量ずつ味わいながらの飲み方があっています。
・IPA(インディア・ペールエール)
IPAは、中程度かそれよりもやや高いアルコール度数をもつエールですが、イギリスでは、アルコール度数の低いビールの名前に使用される場合が多いです。液色は銅のような明るい琥珀色で、ホップの風味が強くて苦味があります。しばしば、麦芽のフレーバーを伴います。IPAは通常ペールエールのカテゴリーに入れられます。、18世紀頃、イギリスの植民地だったインドまでビールを持っていくために考えられた、防腐作用のある「ホップ」を大量にビールに使用し、アルコール度数を高めたビールです。
●スコッチエール
スコッチエールは、スコットランドのエディンバラで生まれました。ほかのエールと比べて低温で発酵させて造られています。アルコール度数が高く、モルトの存在感が特徴的です。もともと、強いビールを好むベルギーへの輸出用に開発されたスタイルで、ベルギーでは「スコッチ」というと、ウイスキーではなくこのエールを指すといいます。

●修道院ビール(アビー、トラピスト)
修道院(アビー)ビールは、どれも上面発酵の「エール」です。樽ではなく瓶詰めしたのちに瓶内熟成されるのが特徴です。そのため瓶の形状で味が違い、同じ銘柄でも製造日からの日数で味が変わってくるという特徴があります。アルコール度数は高めで、濃厚な味わいです。ラガービールのように喉越しを楽しむのではなく、一口一口味わって飲むというのが、修道院ビールの楽しみ方です。中世以降、ヨーロッパの修道院では自給自足の生活がおこなわれ、ワインやビールも、伝染病を媒介しない「命の水」として製造されていました。中でもトラピスト会修道院が製造するものは特別に「トラピストビール」と名乗ることができます。その他の修道院の、伝統的な手法をもとに造られるビールは「修道院(アビィ)ビール」と呼ばれています。
トラピスト・ビールとは、修道院内に醸造所を持つ、トラピスト会(厳律シトー会)の修道院でのみ造られるビールで、この呼称(Authentic Trappist Products)を使うことを許されているのは世界にわずか9ヶ所のみで、そのうち5ヵ所がベルギーにあります(2024年2月現在)。しかし、「自身の敷地内で醸造しなければならない」「修道士が製造に携わらなくではならない」「営利目的であってはならず、収益は修道院のメンテナンスや運営費用に充て、残額は慈善団体に寄付する」の基準があり、国際トラピスト会修道士協会(ITA)より認定を受けている修道院(醸造所)は、2018年には12箇所、2021年では11箇所と増減があり、減少傾向のようです。しかし、商業目的で製造販売を開始している修道院(醸造所)もあるようです。1997年より、トラピストという呼称を守るために、国際トラピスト会修道士協会(ITA)を設立し、基準を満たした商品にのみ「Authentic Trappist Products」という独自のロゴマークを使用しています。トラピスト・ビールとはビールの分類名ではありませんが、いずれの修道院も他のビールのお手本になるようなすばらしいビールを造っています。代表的な銘柄では、「シメイ」「ウェストマール」があります。
●シメイ(ベルギー)
「シメイ」は、スクールモン修道院(ベルギー トゥルネー、ノートルダム大修道院)で造られています。スクールモン修道院(ノートルダム大修道院)の修道僧は、一般にはトラピストとして知られており、厳律シトー修道会に属しています。、トゥルネーは、ベルギーのワロン地域、エノー州、トゥルネー=ムクロン行政区の市にあります。
ノートルダムまたはノートル=ダム(Notre-Dame)はフランス語で「我らの貴婦人」という意味で、イエス・キリストの母である聖母マリアを指します。カトリック教会やカトリック系の学校、また地名や人名などにこの名を冠するものがあります。ノートルダム教会、ノートルダム寺院、ノートルダム(聖堂)大聖堂は、聖母マリアに捧げられ、名付けられた教会堂です。ノートルダム大聖堂の代表的な大聖堂は、19世紀のフランス作家ヴィクトール・ユゴーのゴシック小説(恐怖小説)「ノートルダムの鐘、NOTRE-DAME DE PARIS(パリのノートルダム、ディズニー映画や1956年の映画ノートルダムのせむし男の原作)」で有名なパリのノートルダム大聖堂ですが、ノートルダムを冠した教会堂はフランス内の各地、ベルギー内各地、カナダ、ルクセンブルク世界各地のフランス語圏の都市に建てられてきました。修道院内で生活をする修道士(修道僧)の生活の中心は労働であり、労働によって最も貧しい人たちへの援助を確保するために懸命の努力をしています。昔から修道僧の労働は、穀物や野菜づくりが多かったようですが、最近はそれが軽工業、食品と農業活動の小規模な産業にまで発展しました。これが、修道僧たちが国内の北部でビール醸造を何世紀もの間続けてきた背景です。それゆえ、長年に亘って、修道院が醸造技術向上の主人公となってきたのです。今や醸造技術は最新鋭の科学的方法を採り入れたスクールモン修道院において、完璧の域に達しています。スクールモン修道院は、さまざまな地場産業を興して最大の雇用主となり、この地域に力強い刺激を与えました。
修道僧たち自身が新分野の開拓者となる役割はもはや必要ではなくなり、祈り、学習そして手先の労働の間で過ぎて行く神への献身を続けるために、修道僧たちは次第にこれらの企業活動から身を引いて行きました。中世からビール自体の生産は行われていましたが、トラピストビールとしての生産がシメイ醸造所にて始まったのは、1862年からとなっており、当初は地域の失業者を雇用する目的であったと伝えられています。1876年からはチーズの製造も行うようになり、他のトラピストビールと同様、シメイの販売による利益は、修道院の活動および地域の開発にのみ当てられています。
●ウェストマール(ベルギー)
「ウェストマール」は、フランダース(地域の名称、フランドル、フランデレン)の犬で有名な、ベルギー北部のアントワープ(アントウェルペン)州の北東、ウェストマレ村の美しく整地された田園の中に、エルムの並木に囲まれて建っている「聖心ノートルダム修道院」で造られています。12世紀に建立され、オラ・エット・ラボラ「祈りと労働」というモットーの基、修道士達が農業やチーズ製造、そしてビール醸造に励んでいます。


■ベルギービールとグラス
銘柄ごとにロゴや独自の形をした専用グラスが多い事も特徴の一つとしてあげられます。ベルギービールを味わうためには専用グラスが重要であり、グラスの違いで味わいに歴然の差がでるといわれています。
ワインと同様にビールには熟成によって風味が変わるスタイルもあり、熟成はベルギービールの特徴のひとつです。ランビックでは醸造所内で数年の熟成を経て出荷されます。また、オード・ブライン(ビールスタイルのひとつ、英語ではold brown)で有名なリーフマンス醸造所ではスチールのタンクでの6から8ヶ月の熟成を行った後に瓶内で3ヶ月以上のエイジングを経て出荷されます。リーフマンス醸造所の醸造技術者はリーフマンスのビールが最高のバランスを得るためには3年から5年の熟成が必要と述べています。オルヴァルをはじめ、ベルギービールでは瓶詰めの際に少量の酵母と糖を入れて瓶内発酵を促すボトルコンディションを行うものも多いです。
ベルギーは、国の北半分のフランデレン地域がオランダ語圏、南半分のワロン地域がフランス語圏に属し、東部のドイツ国境に接する一部の街ではドイツ語が用いられる多言語国家です。フランデレン地域のビールは一般に麦芽の風味やフルーティな香りが重視され、肉料理に合う傾向があります。対して、ワロン地域はスパイスの香りや軽い口当たりが特徴で、魚料理や野菜料理に合います。このように、地域によっても特色が異なります。
ベルギーでは、ビールは、中世に修道院の修道士によって造られはじめたのが始まりとなっています。その後ジャン1世(ブラバント公、1253~1294、ブラバント公在位1267~1294、リンブルフ公在位1288~1294)がビール造りを推奨したことも手伝い発展してきました。ビールの多様性を生んだ背景には、国の緯度が高く、ワインを醸造するのに向く良質な葡萄がとれずワインは発達しなかったこと、19世紀に入るまで主流であった自然発酵製法(ランビック)に向く好条件が揃っていたこと、ドイツやチェコほどの良質なホップがとれなかったこと、旧来のハーブやスパイス、フルーツを使用した醸造法が近年まで受け継がれていたこと等、様々な要因が挙げられます。
その他にも、ベルギービールの特徴として、以下の点があります。
1946年に、ビール醸造家による名誉団体「ベルギービール騎士団」が組織されました。
1957年に、EC(European Community、欧州共同体、ヨーロッパ共同体、2009年~EU欧州連合、EU本部もベルギーブリュッセル)の本部がベルギーのブリュッセルに置かれたことで、ベルギー外にもベルギービールが知られはじめるようになりました。1980年はじめに世界的なビール評論家であるマイケル・ジャクソンによって出版された書籍「The World Guide to Beer」を皮切りに、ベルギービールは世界中に広められました。
1999年からは、毎年9月にベルギービール騎士団がビールの守護神聖アーノルドに捧げるミサや、グラン=プラス広場で愛好家らがビールを楽しむ祭典「ベルギービールウィークエンド(BBW)」が行われます。このイベントは、2010年から日本の主要都市(東京、大阪、名古屋、福岡、横浜など)でも開催されています。
2016年に、ユネスコの無形文化遺産に「ベルギービール文化」が登録されました。発酵方法・使用酵母・醸造プロセスなど、伝統的なビールづくりを現在まで守り抜いてきた歴史と、地元の農産物を使用した地域色の濃いビールづくりが評価されたのです。さらに、製造における水の使用量削減など、ベルギービールを次世代に継承するべく、たゆまぬ努力が続けられています。これらベルギーのビールづくりにおける姿勢そのものも含めた「ベルギービール文化」全体が、世界遺産として認定されました。ちなみに、2013年に、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されています。

ビールは製法によってラガー、エール、ランビックの3種に大別されます。
・ラガー
下面発酵で造られます。大量生産に向き、20世紀以降では世界のビール生産の大部分を占めています。ベルギー国内でも生産量の70%がラガーです。ビールとしての特性は低温に冷やして飲まれ、なめらかな喉ごしが特徴です。
・エール
上面発酵で造られます。香味の豊かさが特徴です。飲む適温は常温から5℃程度、低温では香味が損なわれるため常温のまま飲まれる場合も多いです。
・ランビック
ランビックは、ベルギービールの一種で、16世紀にはブリュッセル近郊で醸造されていたといわれています。ベルギーの首都ブリュッセルを中心とした半径10マイル(16km)程、ブリュッセルの南西に位置するパヨッテンランド地域でのみ醸造される自然発酵のビールです。強い酸味が特徴のため、ブレンドやフルーツ等の添加により再発酵させる場合が多い、特色のあるビールのスタイルです。慎重に培養した醸造用酵母を使って発酵させるエールやラガーの製法と異なり、ランビックは自然発酵で造られます。自然発酵は、ブリュッセルを縦断するゼンネの谷に自然に生息するといわれている野生酵母とバクテリアにさらされることで起こります。この珍しい工程により、ドライで、ワインやシードルのようなわずかな酸味という特有のフレーバーがビールに加わります。
ランビックの種類
・ランビック(pure)
純粋なランビック (Unblended lambic) は、濁っていて、無炭酸の酸味がある飲料です。樽出しで飲める所は数少ないです。通常、3年熟成させます。ベルギー国外に輸出されているものでは、カンティヨンのグランクリュ・ブルオクセラという瓶詰めのものがあります。
・グーズ(Gueze)
熟成期間1年の若いランビックと2年から3年熟成した古いランビックを混ぜて瓶詰めしたものです。若いランビックはまだ完全には発酵していないため、瓶内二次発酵が起こり、炭酸ガスが発生します。約1年の再発酵でグーズになりますが、瓶のままで10年から20年保存できます。名前は似ていますが、ドイツのエールのスタイルであるゴーゼ(Gose)とは別物です。
・マールス(Mars)
マールスはランビックを造った後に造る薄いビールです。現在では商業生産されていないようです。
・ファロ(Faro)
伝統的な製法では、醸造したての(ランビックとは限らない)はるかに薄いビールをランビックに加え、さらに黒砂糖(キャラメルまたは糖蜜を使用することもある)を加えた低アルコール分のビールです。ハーブを加える場合もあります。薄いビールまたは水を元々品質が劣るランビックに添加して製造するため、薄くて甘い、毎日飲める低価格なビールを造ることができました。このビールのあまりの後味の悪さを、フランスの詩人シャルル・ボードレールは「まるで一旦飲んでから排泄したものをもう一度飲んだような味」と評しました。
元来、砂糖を加えるタイミングは飲む直前だったため、それによって炭酸やアルコール分が増えることはありませんでした。今日生産されているファロにも黒砂糖とランビックが使用されていますが、その味は必ずしも軽いものではありません。今のファロは瓶詰めされていますが、瓶で二次発酵しないよう、熱処理がなされています。ファロを生産している醸造所にはカンティヨン、ブーン、リンデマンス、モール・スビットなどがあります。
・クリーク(Kriek)
ランビックにクリーク(普通のサクランボの1種)と呼ばれるサクランボの一種を加え、瓶内で二次発酵させてできあがるのがクリーク(Kriek lambic)です。伝統的な製法のクリークはグーズのように辛口で酸味を持つものとなります。
・その他のフルーツ
クリーク以外にも、ラズベリー(フランボワーズ)、桃、クロスグリ(カシス)、ぶどう、苺の実やシロップをランビックに加える場合もあります。ときには、りんご、バナナ、パイナップル、杏子、梅、ホロムイイチゴ(クラウドベリー、キイチゴの一種、北欧では代表的なフルーツでスーパーフルーツとして有名)、レモン、ブルーベリーが使用されることもあります。フルーツを加えて、ビールは通常、瓶内で二次発酵させます。フルーツビールはベルギービールの中でもよく知られた部類ですが、すべてがランビックを使っているわけではありません。また、近年になって発売されたフルーツのビールの中には天然の果物を実際には使用せず、人工甘味料によって甘味がつけられているものもあります。

■ベルギービールの分類
様々な種類があるベルギービールの分類は不可能に近いといえます。識者によって様々な分類がなされていますが、ベルギービールを世界に広めた第一人者、マイケル・ジャクソン(歌手のマイケルジャクソンとは別人)の分類方法に沿ったものを用いる場合が多いです。マイケル・ジャクソンによる分類法は、色や味からなる分類と製造手法による分類をミックスしたものです。
・トラピストビール
修道院内部に醸造所を所有するトラピスト会修道院で作られているビールの呼称です。濃色でアルコール度数が高いものが多いです。トラピストビールを名乗るには条件があり、2024年4月現在は9箇所のみが称号を名乗ることが許されており、そのうちの5種類(以下参照)はベルギー国内で醸造されるビールです。ほとんどの銘柄に専用グラスがありますが、入手困難なグラスもあります。専用グラスは専ら聖杯型です。
・オルヴァル(Orval、オルヴァル修道院)
・シメイ(Chimay、スクールモン修道院)
・ロシュフォール(Rochefort、サン・レミ修道院)
・ウェストマール(Westmalle、ウェストマール修道院)
・ウェストフレテレン(Westvleteren、シント・シクステュス修道院)
※アヘル(Achel、アヘル修道院、ウェストマール修道院)は、1998年にトーマス・サス修道士が修道院内のアヘル醸造所で最初の醸造を始めました。2021年1月、アヘル修道院から修道士がいなくなったため、醸造しているビールに「Authentic Trappist Product」の認証マークを付けることができなくなりました。最後の修道士2名は高齢のため、ウェストマール修道院に移ったそうです。新しいトラピストビールが誕生する一方、既存のトラピスト修道院では修道士の高齢化が深刻な問題となっています。

・アビイビール
別名は修道院ビール、アベイビールです。トラピスト会以外の修道院でもビールの醸造は行われており、それら当時のレシピを元に民間で委託醸造されているビールの総称です。簡単いうと、トラピスト修道院以外で造られているビールやトラピスト修道院から委託を受けて修道院以外の場所で造られているビールで、「Authentic Trappist Product」の認証マークの付与されていない銘柄です。傾向はトラピストビールに近いです。著名な銘柄はレフ(Leffe、ベルギー、レフ修道院)、マレッツ(Maredsous、ベルギー、マレッツ修道院)などがあります。1999年からは、ベルギー醸造者組合が、現存もしくは廃絶された修道院のライセンスにより生産するビールのみを認証アビイビールとしていますが、非認証で独自のレシピにより醸造されるものもあります。
・ホワイトビール
大麦に加え小麦または小麦麦芽を材料として作られたビールです。苦さは控えめで爽やかな口当たりと、ほんのりした酸味の為め清涼感に富んでいます。色は淡い黄色ですが、たんぱく質や酵母のため若干の白濁が見られます。白濁を嫌う場合は、たんぱく質の比較的少ない冬蒔き小麦を使う場合もあります。主な銘柄はヒューガルデン・ホワイト、ヴェデット・エクストラホワイトです。
・レッドビール
熟成時にオーク樽を使うビールです。色は赤みの強い茶色で、時に深紅とも表現されます。甘酸っぱく爽やかな口当たりと芳香が特徴です。著名な銘柄はローデンバッハ、デュシェス・ド・ブルゴーニュです。
・ブラウンビール
主にオースト=フランデレン州で作られるビールです。ブラウン・エールには様々なものがあるが、ベルギーで醸造されるものはオード・ブラインとも呼ばれます。茶色で香ばしさと複雑な味に特徴があります。瓶内発酵を他のボトルビールに比べて長く行なってから出荷される物が多く、銘柄毎の味わいの差は大きいです。著名な銘柄は、リーフマンス オード ブラウン、リーフマンス グーデンバンドです。
・セゾンビール
ベルギー南部のワロン地方で主に造られ、春に製造、貯蔵し夏に出荷されるビールです。夏場でも保存が利くようにホップが多く苦みの強い、ひき締まった味わいのものが多いです。著名な銘柄はデュポンです。
・ゴールデンエール
淡い金色のビールです。口当たりがまろやかだがビールの味がくっきりと強いのが特徴です。ワインの表現を借りると「ボディが強い」ビールです。著名な銘柄はデュベル(Duvel)、デリリウム・トレメンス、ギロチン(ビール)です。
・ランビック
伝統的な自然発酵のビールです。大麦麦芽と麦芽化していない小麦を使用します。酸化した古いホップを使用し、オーク樽で数年熟成させます。熟成まで1、2年かかります。苦みは控えめで強い酸味が特徴です。そのため、他のビールとブレンドやフルーツを加え再発酵させる場合が多いです。著名な銘柄はベルビュー・クリーク、カンティヨン・グース、リンデマンス・グース、ブーン・グースです。
・フルーツビール
フルーツを加えたビールです。果汁を加えてから再発酵させたフルーツ・ランビックが有名ですが、近年は手間のかからない、ホワイトビールに果汁をブレンドしたカクテルに近いものも増えています。チェリー(クリーク)、木イチゴ(フランボワーズ)が多く、その他ではカシス、青リンゴ、バナナ、桃、苺、パッションフルーツ、ミックスとバラエティに富んでいます。

■ビアグラス
ベルギービールは、銘柄ごとにロゴの入った専用のグラスが用意されています。「泡立ちのコントロール」「香り立ちの強化」「ビールの液と泡がバランスよく口に入ること」などの要素から形状が決まります。甘味が特徴のビールには飲み口が外側に開いたチューリップ型、酸味のあるビールにはスニフター(チューリップ型の大型グラス。スニフターグラス、ブランデーグラス、テイスティンググラスとも呼ばれます)のようなバルーン型のグラスが適しています。

■ベルギービールの日本での取り扱い
清酒「白雪」で知られる小西酒造は、所在地の兵庫県伊丹市が1985年にリンブルフ州の州都で、首都ブリュッセルの東約80kmに位置するベルギーの商業都市ハッセルト市と国際姉妹都市提携を結んだことを機にベルギービールの取扱いを開始しました。1988年からはヒューガルデン・ホワイトの取扱いを開始し、社長の小西新太郎が日本人初の「ベルギービールの騎士」に認証されましたが、2008年に製造元のインベブ社(2008年よりアンハイザー・ブッシュ・インベブ)は販売権をアサヒビールに移す決定をしました。その後も小西酒造は他社のベルギービールを取り扱っています。その後、ベルギービールの「ヒューガルデン」「レフ」「ステラアルトワ」は、2018年に、アサヒビールからABIJ(アンハイザー・ブッシュ・インベブの日本法人)へ変更になりました。
また、ユーラシア・トレーディング社は、独占販売権を締結したハーヒト醸造所(プリムスなど、ベルギーで3番目の規模)をはじめ、ベルギーやイタリア、フィンランド、タイ王国のビールを取り扱っています。2017年には、ベルギービールの輸入事業が評価され、在日ベルギー・ルクセンブルグ商工会議所主催の日本輸出大賞を受賞しました。

■ベルギービールの賞味期限
ベルギービールには賞味期限の表示はもともとありませんでした。表記を指定されたのはEU加盟後です。ベルギービールの多くは酵母が熟成を続ける瓶内発酵で、まるでワインのように適温で保存していれば賞味期限にかかわらず美味しく楽しめます。ベルギービールはEUの規定により賞味期限または瓶詰日の表示が義務付けられているので、賞味期限をとりあえず瓶詰めしてから2年後と表示している醸造所が多いようです。
ある種のベルギービールの場合、相当に賞味期限が長い、もしくは極端な話、「賞味期限はない」と考えても差し支えないといわれています。普段、見慣れている、下面発酵のピルスナータイプのビールは、新鮮さが味わいの重要なファクターになっています。ところが、ベルギービールは機能的にも食文化の面でも、ワインと同様に考えられています。寝かせることによって風味が増したり、ワインのような「ヴィンテージ・ビール」というものもあります。 
ベルギービールは保管温度の点から見ると、以下の3つのカテゴリーに分類されるのだそうです。
1.ボトルコンディションド・エール(瓶内二次発酵)
例えば、有名なランビック(自然発酵)のカンティヨン・グース(カンティヨン醸造所)は、ボトルコンディションド・エールに分類されるビールです。これは、フーデル(オーク樽)と呼ばれるオークの樽で熟成させて完成したビールをボトルに詰める時に酵母と糖分を加え、ボトルの中で再発酵させているビールなのです。熟成と発酵の違いは、自身の酵素で分解を行うことが「熟成」、酵素や微生物の働きで新たな成分を生み出している状態が「発酵」です。 酵素とは、タンパク質で、酵母は、糖をアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)に分解(アルコール発酵)する微生物です。つまり、麦芽や葡萄などのジュースに含まれている糖が、酵母によって分解(アルコール発酵)されて、アルコールを造るということになります。ちなみに、麦(通常は大麦)を発芽させて麦芽にする理由は「糖」にあります。 ビールに欠かせないアルコールと炭酸ガスは、酵母が糖を分解することで生じますが、発芽前の麦には糖が十分に含まれていないのです。 しかし麦を発芽させると、酵素の働きで麦の主成分であるデンプンが糖に変わります。
お酒の場合にたとえると、ウイスキーの場合は、アルコール度数の高い(40%以上)蒸溜酒なので、樽の中に糖も酵母も存在しないので樽の中では発酵(アルコール発酵)をせずに木樽によって熟成をします。アルコール度数が12度くらいまでは酵母が活発に活動して発酵を進めますが、アルコール度数が12度程度になると酵母が次第に死滅していくことでその活動が弱まり、18度以上になると酵母の活動はほとんど止まりますので、発酵はしない(腐らない)のです。また、ウイスキーを熟成させるのは木樽の力です。木樽の成分がウイスキーの色を変え、香りや風味を変えます。よって、ガラスの成分が溶け出してウイスキーの風味に影響するということはないので、密封状態のガラス瓶の中ではウイスキーが熟成することは理論上ありません。
それに対し、瓶内二次発酵をさせないビールもありますが、瓶内二次発酵をするようなビールの場合は、ボトルの中で酵母は生きており、ビールに溶解している酸素によって糖分をアルコールと炭酸ガスに分解するというアルコール発酵を、ボトルの中で行っているのです。アルコール発酵によって炭酸ガスが発生しますが、これがビール(シャンパーニュも同様)の炭酸です。ワイン(日本酒も同様)の場合には、主にワイン樽で発酵や熟成を行ないますので、木樽から炭酸ガスは空気中に放出されますので、炭酸は含まれていません。また、澱(おり、沈殿物、カスなど)を取り除く時にフィルターによって濾過する場合が多いですが、この時に炭酸ガスも一緒に除去される場合も多く、ビールやシャンパーニュなどの炭酸を含む場合には、瓶詰の段階で炭酸ガスを注入したり、少量の糖を加えることで瓶内二次発酵を促進したりする場合もあります。しかし、現在は、製造方法も多岐に渡っており、炭酸ガスの発生方法もさまざまです。「天然の炭酸」を売り(特徴)とした「クラフトビール(地ビール)」もあります。このような瓶内二次発酵により、ビールは酸化することなく、さらに年月と共に風味に磨きがかかるということになります。これに用いられる酵母は、一般に高温(14~38℃)を好む上面発酵酵母(エール・イースト)であるため、冷蔵庫などの低温環境(11℃以下)では正常な活動が出来ず、年月と共に風味に磨きがかかるということにはなりません。このタイプのビールを長期保存する場合は、15℃前後の暗所に置くのがベストなのです。こうした条件に保存する限り、ボトルコンディションド・エールはラベルに記載されている賞味期限を越えても、何ら品質劣化は見られません。しかし、近年の多くの大手メーカーのビールは、輸送中に液温が上がり、樽・瓶・缶の中で二次発酵しないよう出荷前に酵母を濾過して工業用の炭酸を加えている場合が多く、賞味期限が9ヶ月の場合が多いです。これは、ビールの造り方として、熟成を目的とせず、出来るだけ早く飲んだ方が美味しくなるようにしているからです。ワインでも同様に、ボジョレーヌーヴォーなど、長期熟成を目指して造っていないワインもあります。しかし、実は、ビールに賞味期限はありますが、消費期限はありません。 ワインやウイスキー、日本酒には、賞味期限もありません。代わりに「製造年月日」の記載がある場合もあります。また、通常の日本酒は、「製造年月から約1年であればおいしく飲むことができます。」と公表している場合も多いです。1年以内の賞味期限とは、定められた方法(冷暗所など)において保存した場合において、商品をおいしくお飲みいただける期間の目安です。「消費期限」とは、定められた方法(冷暗所など)において保存した場合において、品質が劣化しやすく速やかに消費すべき食品(製造または加工後、およそ5日以内で品質が劣化するもの)について、腐敗・変敗などの劣化に伴う衛生上の危害が発生するおそれがないと認められる期限のことをいいます。ビールには、消費期限がないため、容器が密栓されていれば賞味期限が切れても衛生的に問題はありません。ただ、時間が経てば劣化が進んでいくため、風味は落ちます。 ビールは賞味期限が切れてから1~2ヶ月ほどです。しかし、ベルギービール(例外もあります)のように、ワインと同様の扱いをされ、時の経過とともに瓶内発酵によって複雑味が増し美味しくなると考えられているビールもあります。
2.パスチャライズド・エール(低温殺菌)
ビールづくりには、ビール酵母による「発酵」という過程があり、その後、冷却することで酵母を眠らせて活動を止める「熟成」に入ります。「低温殺菌」とは「酵母の動きを止める」のではなく、酵母を完全に殺菌してしまうことで、その後のビールの味に影響する可能性のある発酵や熟成を一切止めてしまうことを指します。こうすることで、ビン・缶に詰められ、お店に届き、みなさまのお手元まで品質への影響を少なくして届けることができるのです。1990年代には、日本国内では、ほぼ「生ビール」へと移行していきましたが、パストライズ(低温殺菌)している銘柄もあります。低温殺菌法(パスチャライゼーション)を発明したのは、ルイ・パスツールとクロード・ベルナールです。ワインの腐敗原因を調べて、アルコール発酵や発酵(酵素の働きによって有機物質に化学変化をもたらす代謝プロセス)が微生物の働きであることを発見しました。また、パスツールは、「近代細菌学の開祖」ともされ、ワクチンの予防接種という方法を開発し、狂犬病ワクチン、コレラワクチンの発明など、化学分野、生物学分野、免疫学などに多大な功績を残しています。
ちなみに、「生ビール」は、酵母が殺菌されていない(熱処理をしていない、非熱処理)ままのビールを「生ビール」と呼びます。古くは酵母の活動を止めるためには加熱殺菌しか方法が無かったのですが、技術の進歩により「酵母のろ過」が可能になり、熟成を終えた段階でろ過することでビール内の酵母を取り除き、加熱せずにビールの品質をキープすることができるようになりました。ただし、現在の技術でも酵母を完全にろ過するのは難しく、製品の中にまだ少し残ってしまうようです。だから、「生」ビールと呼ばれています。冷蔵保管し続けることで、残ってしまった酵母を眠らせたままにして品質をキープする必要があります。しかし、今の醸造技術や設備だと、「生ビール(非熱処理)」と「加熱殺菌されたビール」の違いは、一般の方には、ほとんどわからないレベルです。
3.ピルスナー及びラガー
ピルスナー(ラガー)ビールは、低温による熟成を特徴としており、飲みごろの温度も低め、冷やして飲むのが前提で、常温で飲むのはあまりおススメできません。ピルスナーは、1842年に現在のチェコのボヘミア地方西部のピルゼンで誕生した、黄金色のビール(ボヘミアンピルスナ-)で、淡色麦芽・ノーブルホップ・軟水を用います。それを真似てもう少し色が薄く、ボディが軽くてドライなジャーマンピルスナ-が誕生し、日本の大手メーカーもお手本としたので日本人にとっても馴染み深いビールです。ピルスナーの元祖とも言われるチェコの「ピルスナーウルケル」は、チェコのピルゼン(チェコ共和国のボヘミア地方西部の都市、プラハ、ブルノ、オストラバに次ぎチェコ第4の都市)でのみ醸造されているビールです。伝統的な「ハラディンカ」という注ぎ方で提供されるのが大きな特徴です。「ハラディンカ」とは、日本語で「水平」という意味で、先に泡を入れてその下にビールを注ぐ手法を用います。 泡の量は指3本(泡の上面から下面までが、スリーフィンガー、グラスの約半分弱)と決まっており、苦味と甘みのバランスが程よく、チェコでは特に伝統的な注ぎ方です。通常は、バーなどでビールサーバーで注がれるのが多いですが、瓶ビールでも可能です。グラスを瓶に被せて、勢いよくひっくり返します。ちょうど、グラスの中でビール瓶が逆さまに立っている感じです。瓶をゆっくりと、瓶の口がグラス内の泡の上面に触れるか触れないかの距離感で上へ動かして、瓶内で泡を立てながら、ビールを注いでいきます。炭酸をしっかりと抜き、クリーミーな泡をつくるのがポイントです。
エールは、もともと、イギリスやアイルランドなどの涼しい気候の土地で育まれたビールです。冷涼な地域には、ビールを冷蔵庫に入れてキンキンに冷やす習慣がありません。そのため、エールは、常温のまま飲むことを想定して造られています。また、エールはラガーよりも香りや味わいが豊かなのが特徴です。冷やしすぎると、せっかくの風味を感じにくくなってしまうので、ぬるめの温度が適温とされています。つまり、エールはラガーに比べて、ぬるいほうがおいしく飲めるものが多いのです。ただ保管温度は、ラベルに記載の「要冷蔵(10℃以下)」の有無を確認して適温にて保管します。当然、夏場の常温と冬場の常温の差は大きいので、常温といっても春や秋の8℃~13℃程度が適温です。

■チェコ
チェコ共和国、通称チェコは、中央ヨーロッパにある共和制国家で、首都はプラハです。
国土は東西に細長い六角形に近い形をしており、北はポーランド、東はスロバキア、南はオーストリア、西はドイツと国境を接しています。
国体が常に激しく変化して来た歴史を持つ国家の一つである。かつてはチェコスロバキアと呼ばれた共産主義体制国家の構成地域でしたが、1989年からの「東欧革命」によってその体制が崩壊したことから、1993年にチェコとスロバキアへ分離して現在の同国が成立しました。「東欧革命」とは、1989年、東ヨーロッパ社会主義諸国で連続して起こった民主化、議会制への転換、市場経済の導入などの諸改革をいいます。 これによって東欧社会主義国は消滅し、同年末に米ソ首脳がマルタ会談で冷戦の終結を宣言し、1991年にはソ連自体が解体され消滅しました。
チェコ共和国は、世界のビールシェアの約7割を占めるともいわれる「ピルスナー」発祥の地として知られています。チェコや日本で流通するビールのビアスタイルは、ほとんどがピルスナーです。つまりチェコビールは日本のビールと似ていて、日本人にも親しみやすい味わいです。下面発酵で造られるピルスナーは、ホップの香りとほろ苦さのバランスがよく飲みやすい味わいです。ただし日本のビールと比べると、チェコビールはコクが強く苦味はやや強めです。また日本のビールはキンキンに冷やして飲むとのど越しのよさが引き立ちますが、チェコのラガービールは5〜7度が適温とされています。
国民1人あたりのビール消費量が世界一多いのが「チェコ」です。20年以上もその座をキープしており、1人当たりの年間消費量は約140Lにも及ぶといわれています。
現地ではMILIKO(ミルコ)と呼ばれる、ほとんどが泡になった注ぎ方も人気です。
チェコは、ピルスナー発祥の地ともいわれています。ビールは紀元前からすでに飲まれていたと考えられており、種類としては上面発酵で作られる色の濃いエールビールが主流でした。1840年代にドイツで下面発酵のラガーが発明されて人気になりました。チェコのピルゼン地方で同じようにラガー酵母でビールを醸造したところ、水の硬度が違うため、風味の異なるピルスナービールが生まれたといわれています。現在では、世界で飲まれているビールの8割以上がピルスナータイプ・ラガータイプのビールです。本場チェコにおけるピルスナービールの製法は、ピルスナーウルケル社によって代々引き継がれ、ピルスナーウルケルブランドのビールは世界中で愛されています。
主なチェコビール
・ピルスナー ウルケル(Pilsner Urquell)
1842年にチェコの地方都市ピルゼンで誕生し、ピルスナービールの元祖としても知られる歴史あるビールが「ピルスナーウルケル」です。
「ピルスナーウルケル」は、「下面発酵」によってゆっくりと酵母が発酵するため、豊かなコクとすっきりとした後味が特徴のビールです。そして、苦味と香りのバランスがよく、ほのかに感じる甘味も美味しさを引き立てています。また、ピルスナーウルケルのアルコール度数は4%以上5%未満に抑えられており、キレのある味わいで飲みやすいのがポイントです。アルコールが苦手な方や、ビール初心者の方にもおすすめです。
・ブドバー(Budvar)
ブドバーは700年の伝統をもつ国営の醸造所ブジェヨヴィツェ ブドヴァル(通称ブドバー)。です。チェコでピルスナーが誕生する以前からラガービールの醸造が行われており、王室御用達の最高級ビールとして広く知られていました。アメリカのバドワイザー誕生のもととなったビールを醸造していることで有名です。ブドバー社の設立は1895年ですが、ブドバー社があるチェスケー・ブジェヨヴィツェ市でのビール醸造の歴史は13世紀(1265年)にさかのぼります。当時のボヘミア王子オタカル2世がチェスケー・ブデヨヴィッツェに醸造所を建設した後、1531年にはフェルナンド国王がこの地域のビールを王室御用達に指定しました。それ以来、高品質なビール生産地として広くしられるようになりました。現在は76カ国に輸出されており、チェコビールの中でも売上トップクラスのビールです。
ブランド名にもなっている「Budějovický(ブジェヨヴィツェ)」とは、チェコのチェスケー・ブジェヨヴィツェ市に由来します。ドイツ語読みはブドヴァイス、英語読みにすると「Budweis(バドワイス)」になり、「Budweisの」という意味になる「er」を付けるのは、産地に由来する名前なのです。このブジェヨヴィツェで造られているブドバーは、EU連合が規定する「原産地名所保護制度」で守られています。
「ブデヨヴィッキー・ブドバー」は、700年以上の伝統を誇る国営の醸造所で造られているピルスナービールです。また、「ブデヨヴィッキー」はドイツ名で「バドワイズ」とも呼ばれています。原料にモルトと最高級ホップのひとつ「ザーツ・ホップ」を使用し、地下300mから汲み上げた良質な天然水を使用してつくられているのが特徴です。そして、苦味が活きる下面発酵により奥深いコクとモルトの甘味を楽しめる、なめらかな喉越しも魅力のビールです。また、ホップの芳醇な香りが活きているのもポイントです。口の中に広がる爽やかな香りも楽しめます。

・スタロプラメン(Staropramen)
チェコの首都プラハにあり、主にラガービールを製造する1869年創業の醸造所です。チェコ全土におけるビール生産量ではトップクラスを誇り、製品は40か国以上に輸出されています。チェコ国内では、工場に隣接されたできたてのビールを提供するレストランも経営しており、地元民がわざわざ訪れるほどの人気です。
140年以上の歴史をもつ、伝統のチェコビールが「スタロプラメン」です。「ダブルデコクション製法」を採用しているのが特徴です。濃厚な麦汁をつくり、モルト本来の旨味を引き出しています。モルトの深いコクを楽しみたい方におすすめのビールです。また、グラスに注いだときの美しく輝く黄金色のボディも魅力のひとつです。視覚でも楽しみながら、麦芽の甘味とホップの苦味による複雑でバランスのよい味わいを楽しめます。

・プラハ(Praga)
プラハは伝統的な醸造方法を守っている醸造所です。1000年以上ビールの醸造を続けているブジェヴノフ修道院と共同開発することで、昔ながらの製法を守りつつ、時代に適したビールを作り続けています。オープンバット発酵槽を用いて50〜60日ほどかけて醸造することで、ほかの大手メーカーとは異なる味わいを生み出しているのもポイントです。ワールド・ビア・アワードで2つの銘柄がゴールドメダルを受賞するなど、世界的にも評価の高い醸造所です。
「プラハ プレミアム ピルス」は、最高級ホップの「ザーツ・ホップ」と、自社農場で栽培し厳選されたモルトを使用しています。地下300mから湧き出ている軟水を使い、爽やかな香りと苦味が楽しめるチェコビールです。伝統の酵母を使用してつくられており、奥深いコクが生まれ、複雑でバランスのよい味わいもポイントです。アルコール度数4.7%と飲みやすく、ホップ由来の苦味を気軽に楽しめます。

●ラガー
「ラガー(ピルスナースタイル)」は、下面発酵によって造られたものを指します。下面発酵とは低温で長期間発酵させる方法です。酵母が麦汁の下面へ沈んでいくために、下面発酵と呼ばれています。下面発酵の特徴は低温で発酵させるため、雑菌があまり繁殖することなく、常に品質を一定に保ったままビールを造ることができることです。最近の大量生産されるビールには、最適な方法といえます。日本で流通しているビールの99%がピルスナースタイルですが、ピルスナースタイルはラガーの一種です。ビールづくりでは、原料や醸造方法を組み合わせることで、様々な味わいのビールが造られます。スッキリしたのどごしのビールやフルーティーな香りのするビールなど、それらの種類は、ビアスタイルと呼ばれ、細かく100種類以上に分類されています。どんなビール(銘柄)でも、これらのビアスタイルに分類されるので、好きなビアスタイルを知っておくと、おいしく飲める銘柄の幅を広げられます。
●ピルスナースタイル(ラガー)
ビルスナ―スタイルは、チェコのプルゼニ(ピルゼン)地方を発祥とするビールのスタイルの一種です。淡色の下面発酵ビールであり、明るく輝かしい黄金色の色味とともにホップが生む爽やかな苦味が特長です。アルコール度数は4~5%の製品が多いです。1842年にバイエルン人醸造家ヨーゼフ・グロールによってプルゼニで開発され、現在もなお製造されているビルスナ―スタイルの元祖といわれる歴史あるビール「ピルスナー・ウルケル」は、かつてSABミラーが所有していましたが、2017年3月にアサヒビールに売却されました。ピルスナービールはチェコの誇る世界最高品質のジャテツ産ザーツホップとモラビア産淡色モルトを原料とし、プルゼニ地方特有の軟水によってバイエルン式下面発酵ラガー製法により醸造されています。ミネラル分の少ない軟水を使うことによって、「世界初の黄金色のラガー」が誕生しました。ピルスナー・ウルケルは1993年まで伝統的な木樽によって製造されてきましたたが、この年から大型の円筒形タンクが導入されました。味を確認するため今もなおごく少量が伝統製法によって製造されています。
現在、世界中で醸造されているビールの大半はピルスナースタイルです。ただし、世界各地のピルスナービールは使用する原材料により味わいもさまざまです。チェコスタイルは明るい黄金色で中程度の苦みと独特の香りを持ち、麦芽とザーツホップのみを原料としています。「ピルスナー」と名乗っているビールはチェコにおいてはピルスナー・ウルケルのみですがチェコ以外においては同じタイプのチェコ産ビールもチェコスタイルのピルスナーとみなされます。
日本でビールといえばピルスナースタイルのビールを指すことが大半です。大手ビール会社が醸造、販売するビールも多くはピルスナースタイルです。欧州以外でビールといえばピルスナースタイルのビールを指すことが大半です。日本だけでなく、中華人民共和国、韓国、北朝鮮、高温多湿な気候である東南アジア、南アジア、中南米など、世界中でピルスナースタイルのビールが製造されています。

■世界のビール会社
世界最大のビール会社は、ベルギーに本拠を置く「アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)」社です。2008年に、ベルギーのインベブ(元々ベルギー本社の世界最大規模のビール会社)が、オランダ・フランスの大手金融機関から融資を受け、バドワイザーで知られるアメリカのアンハイザー・ブッシュを買収・合併し、社名変更、CEOにはインベブCEOのカルロス・ブリトが就任しました。買収総額は約5兆8000億円で、ビールメーカーの買収では空前の規模でした。米国のバドワイザーをはじめ、ベルギーのステラ・アルトワ、メキシコのコロナなど名だたるブランドを傘下に収め、世界全体のシェアの3割を占めています。2位にオランダの「ハイネケン」、3位に中国の「華潤雪花(China Resources Snow Breweries)」と続き、このTOP3だけで世界のビール生産量の約50パーセントを占めています。とくに、「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」は他を大きく引き離し、単独で約30%ものシェアを誇っています。4位にはデンマークの「カールスバーグ」、5位にはアメリカの「モルソン・クアーズ」が続いています。ちなみに、日本勢は、アサヒビールが最高位で7位です。
ビール業界もウイスキー業界同様、M&Aが多く、日々変化しています。
世界市場では、ABインベブのほか、アメリカのモリソン・クアーズ社のクアーズやミラー(元々ミラーはアメリカで創業、その後SABミラー傘下、ABインベブに買収された時に、ミラーブランドは、モリソン・クアーズへ売却)、オランダのハイネケン、デンマークのカールスバーグがが大きなシェアを持ち、世界規模で競争やM&Aを繰り広げています。日本はこうした世界大手が、本格的に直接参入していない珍しい市場です。しかし、ごく最近では少しずつ日本法人も誕生しているようです。バドワイザーは、2018年まではキリンでしたが、2015年にABIの日本法人「AB InBev Japan合同会社、2023年までは、アンハイザー・ブッシュ・インベブ・ジャパン(ABIJ)」が設立され、2019年からはバドワイザーの取扱いを開始しています。バドワイザーの製造会社である米国のアンハイザー・ブッシュ社(ベルギーのABインベブ傘下)」は、ABIの子会社です。ハイネケンは「ハイネケン・ジャパン(2023年まではキリン)」、カールスバーグはサントリーがライセンス契約で製造販売し、モルソン・クアーズ社の所有するビールブランドのクアーズとミラーは、2021年日本市場から撤退(日本法人も終了)しています。モルソン・クアーズの所有するブランドの内、ジーマとブルームーンについては、2022年に白鶴酒造が、日本独占輸入販売権を取得し、国内販売を再開しています。ブルームーンは、1995年発売の白ビールですが、日本ではコリアンダーやオレンジピールが含まれているため発泡酒扱いとなっています。ジーマは、1993年発売の果実酒ベースのリキュールです。クアーズは、1873年にアメリカ・コロラド州ゴールデンで創業したアメリカのビール製造会社でブランドです。2005年2月にカナダのモルソンと合併しモルソン・クアーズ(Molson Coors Brewing Company)が持ち株会社となりました。モルソンは、日本では馴染みが薄いですが、 1786年にカナダ・ケベック州モントリオールで創立されたカナダのビール醸造会社及びブランドです。カナダのビール市場の45%の占有率を誇り、競合のラバット(ABI傘下)と1位を争っている。ミラーは、1855年にウィスコンシン州ミルウォーキーで創業したアメリカのビール製造会社でブランドです。2002年7月に南アフリカ共和国のサウス・アフリカ・ブリュワリーズ(SAB)に吸収合併され、SABミラー社の傘下となりました。2016年、SABミラー社がアンハイザー・ブッシュ・インベブに買収される際、ミラークアーズ社の株式はモルソン・クアーズ社に売却されました。
世界最大のビール会社である「アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)」社は、1366年にベルギーで創業の「アルトワ 社(ステラ・アルトワ)」と1860年にアメリカで創業の「アンハイザー・ブッシュ社(バドワイザー)」が起源となります。アルトワ社は、ベルギーにあるルーバンという都市にブルワリー・ドゥ・ホールン醸造所が作られた1366年まで遡ります。1708年にセバスチャン・アルトワがその醸造家となったことで、醸造所の名前が、ブルワリー・ドゥ・ホールン醸造所からブルワリー・アルトワ醸造所(アルトワ醸造所)へと変わりました。1926年、アルトワ醸造所はクリスマスのための特別なビールを造ることにしました。このクリスマスのビールは、類まれな透明度と輝くような黄金色を表す「ステラ(ラテン語で星を意味する言葉)」と名付けられました。星はクリスマスシーズンには人気のシンボルです。そして、「アルトワ」は醸造所のオーナーの名前です。このビールの発売は大成功をおさめ、顧客からの要望で一年を通してステラ・アルトワを製造することになりました。現在、ステラ・アルトワは世界中80カ国で購入することができます。さっぱりとしていて、バランスのいい味わいで、休日や日々の食卓で楽しむのにおすすめのビールです。すっきりとした味わい、甘い香り、そして微かなスパイシーなハーブのフレーバーと、類まれな透明度を生み出すために厳選した材料を使い、ステラ・アルトワを発酵させています。グラスをもビールも十分に冷やすことがおすすめです。
バドワイザーも同じく、ABIの子会社のアメリカ合衆国ミズーリ州セントルイスに本社を持つアンハイザー・ブッシュ社が生産・販売するビールの銘柄です。1876年に生産が始められ、「KING OF BEERS」をキャッチコピーとしています。「バドワイザー」の名称は、中世以来ビールの名産地として知られるボヘミア地方のブトヴァイス(Budweis、現在はチェコのチェスケー・ブジェヨヴィツェ市)にちなんだものですが、「バドワイザー」の名称使用をめぐってチェコの生産者団体との間で長い争いがあります。日本での販売では、1985年からサントリーがライセンス生産を行っていました。その後、1993年麒麟麦酒とアンハイザー・ブッシュ社の合弁企業、バドワイザー・ジャパンを設立し生産を行いました。1999年にバドワイザー・ジャパン解散後は麒麟麦酒が引き続きライセンス生産および米国製バドワイザーの輸入を行いました。2018年末にキリンによる日本版バドワイザーの生産が終了し、2019年1月からアンハイザー・ブッシュ・インベブによる輸入販売が行われています。
キリンの製造設備ではツイストキャップ瓶の製造ができず、一般的な王冠の330mlリターナブル瓶を使用していましたが、アメリカ・韓国製に変更されたことで、アメリカ国内仕様と同じツイストキャップの355mlワンウェイ瓶に変更され、缶もキリンビール各種と共通仕様の500ml/350ml缶からアメリカ国内仕様と同じ、赤いプルトップの473ml/355mlサイズに変更されています。また業務用の樽も、韓国のビールメーカーでABインベブ傘下の、韓国最大手のOBビールのものに切り変わっています。2021年6月頃より、缶製品も韓国OBビール製になり、ロング缶も韓国国内向けと同様の500mlに変更されていますが、瓶製品は王冠やラベルレイアウトの変更はあるものの、引き続きアメリカ製が販売されています。さらに2021年秋より、業務用の樽は順次ベルギー製で回収不要の18Lプラスチック樽『Pure Draught(ピュアドラフト)』に変更されています。

缶のデザインは、瓶のラベルを縦長にデザインデザインしたものであり、1997年に横向きで、当初はロゴなどをエンボス加工に変更しました。バドワイザー・ジャパン解散後は一般的な缶に変更されました。2011年よりボウタイ(蝶ネクタイ)を象徴的にデザインしたものに順次変更され、日本では2012年5月中旬より変更(瓶についても、2012年よりラベルのレイアウトを一部変更)されています。2012年~2016年のデザインは、全体的に赤色のデザインに変更され、ブランドイメージの刷新を図ったそうですが、逆にブランド認知を低下させる結果となり、2016年3月に再びデザイン変更され、以前のイメージに復活しています。瓶はクラシカルなデザインに、缶は瓶のラベルをはみ出すように大きくデザインしたものに変更されています。

ハイネケンは、オランダのビール醸造会社及びブランド名です。1863年にヘラルド・A・ハイネケンによって創立され、現在では世界170か国以上で販売、アンハイザー・ブッシュ・インベブに次ぐ世界第2位のシェアを占める世界的ビール会社です。オランダも含めて世界100か国に醸造工場を持っています。アフリカやアジアなどビール会社に技術指導を行っており、日本のビール会社にも多大な影響を与えています日本では麒麟麦酒(二代目)との合弁会社ハイネケン・キリン株式会社(2010年3月にハイネケンジャパン株式会社から商号変更)を通じて、いくつかのビールが販売されていましたが、2023年3月に提携を解消し、ハイネケン本社がハイネケン・ジャパンとして新会社を設立して事業を行っていますが、瓶・缶製品の日本国内での製造は引き続き麒麟麦酒に委託し、業務用ビールの販売もキリンビールが継続しています。
カールスバーグは、1847年に、デンマーク・コペンハーゲンでJ.C.ヤコブセンによって創業されたデンマークのビール醸造会社でありデンマークのビールのブランド名です。ドイツ西部のザールラント州にも同名のカールスバーグというビール会社があるが無関係です。社名を冠したビールブランド、カールスバーグが主力製品です。ロゴについている王冠のマークは、デンマーク王室御用達の証です。140国以上に製品を輸出し、40か国に醸造所を持つ世界第4位のビールメーカーです。

ちなみに、「ビール」と「発泡酒」の違いは原料の使用比率です。
日本では、酒税法により、麦芽使用比率が「50%以上」のものを「ビール」、麦芽使用比率が「50%未満」のものを「発泡酒」と表記すると定められています。さらに、麦芽使用比率が50%以上であっても、副原料の使用比率が「5%未満」でないとビールと名乗ることができないと定められています。副原料とは、主に香りづけ(コリアンダーシード・オレンジピール)に使用されており、副原料を5%以上使用した場合は、麦芽の使用比率は「ビール」と同量ながら、「発泡酒」に分類されています。



■法律上のお酒の定義
お酒とは、日本の酒税法において酒類とは、「アルコール分1度(1%)以上の飲料(飲用に供し得る程度まで水等を混和してそのアルコール分を薄めて1度以上の飲料とすることができるものや水等で溶解してアルコール分1度(1%)以上の飲料とすることができる粉末状のものを含みます。)」とされています。

果実酒と甘味果実酒の酒税法上の違い
①「果実又は果実及び水」を原料として発酵させたものはアルコール度数が1%以上であれば、アルコール度数に関係なく「果実酒」になります。
②果実に糖類を加えた場合、糖類が砂糖、ぶどう糖、果糖の場合で発酵後のアルコール度数が15% 未満のものは果実酒です (15%以上は甘味果実酒)。
③果実に糖類を加えた場合、 糖類が砂糖、ぶどう糖、果糖以外の場合は発酵後 のアルコール度数のいかんを問わず甘味果実酒になります。

製法による分類
①醸造酒
酵母菌によって発酵されたものをそのまま飲むお酒で、ワイン(葡萄)、ビール(麦芽・モルト)、日本酒(米・米麹)など
※酒税法上は、ビールと発泡酒は、発泡性酒類になります。
②蒸留酒
醸造酒を加熱し蒸留して作られるお酒で、焼酎(穀類など多種)、ウイスキー(大麦・麦芽)、ブレンデー(ワイン)、ジン(穀類)、ウォッカ(穀類)、ラム酒(サトウキビ)、テキーラ(竜舌蘭)など
③混成酒
醸造酒や蒸留酒に果実や香料、糖などの副原料を加えて作られるお酒で、梅酒などの果実酒やリキュールなど
④カクテル
お酒に別のお酒や何かを加え新しい味を作り出した飲み物

■適切な飲酒量(2杯~4杯)
純アルコール摂取量厚労省は、ガイドラインで下記の1日当たりの純アルコール摂取量を示しています。
計算式:純アルコール量(g)=摂取量(ml) × アルコール濃度(%)× 0.8(アルコール比重g/ml)
①生活習慣病のリスクを高める飲酒量(純アルコール)
男性は40g以上、女性は20g以上
②節度ある適度な飲酒量(純アルコール)
1日平均純アルコールで約20g程度
③ざっくりした目安として、種類を問わず約2杯となります。多くても4杯です。日本酒の場合は、1合~2合になります。

■許容量を超えない範囲
ご健康を考えて、一度にたくさん飲むのではなく、美味しいお酒を適度に楽しんで頂き、末永く、ご健康でお過ごし頂きたいと思う次第です。そして、泥酔するのではなく、カッコよく、スマートに飲んで頂きたいと思う次第です。ただ、スタンダードカクテルは、カクテルベースに強いお酒を使用し、飲み易くしたものが多く、比較的アルコール量が多いので注意が必要です。
ご自分の許容量を超えない範囲でお楽しみ下さい。
日本人の半数程度は外国人と比較してアルコール耐性が低いようです。個人差もあります。

■お酒の種類別の純アルコール量(目安)
・ウイスキー1ショット(30ml、40~60%)の場合
30ml×(40~60%)×0.8g/ml=9.6g~14.4g 
・ビール小瓶1本(334ml、5%)の場合
334ml×5%×0.8g/ml=13.36g
・ワイン1グラス(120ml、12%)の場合
120ml×12%×0.8g/ml=11.52g
・カクテル1グラス(100ml、10~30%)の場合
100ml×(10~30%)×0.8g/ml=8.0~24.0g
・日本酒1合(180ml、15%)の場合
180ml×15%×0.8g/ml=18.0g
・焼酎1グラス(100ml、20~40%)の場合
30ml×(20~40%)×0.8g/ml=4.8~9.6g