ウイスキーのお勉強
ウイスキーの定義やウイスキー業界の勢力図などについて、ウイスキーについての理解を深めるために整理してみました。
勉強途中ですので、参考として下さい。蒸溜所の数等も日々変化しております。適時修正してまいります。
歴史や文化を理解する目的で、一部、その歴史も踏まえて整理してみました。
ここでは、ウイスキーの情勢や基本に触れてみます。
■ちょっとしたこだわり
■「蒸留」と「蒸溜」のどっち?(「さんずい」の有無)
常用漢字である「蒸留」は公文書等で一般的に使用されますが、お酒業界では、「蒸溜」の文字ににこだわりのある場合も多いので、当店も「蒸溜」を使用します。
ウイスキーに限らず、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラと多くのスピリッツが該当する蒸溜酒ですが、ことお酒に関しては「蒸溜酒」と表記するのがこだわりらしいです。蒸溜とは、色々な成分からなる混合物の沸点の差を利用して分離、濃縮を行うことを指し、ウイスキーでいえば水とアルコール(エタノール)を分離、濃縮する人為的操作です。ちなみに、水の沸点は100℃ですが、エタノールは78.3℃です。エタノールの方が先に蒸気として気化するため、その蒸気を集めて冷却することで水と分離させ、度数を上げるのです。
前述した「蒸留酒」と「蒸溜酒」の違いは、「留」と「溜」の「さんずい」の違いですが、「水」を表す「さんずい」はお酒造りの現場ではお酒を表しているようです。サントリーなどのHPでは「山崎蒸溜所」、「白州蒸溜所」との記載です。「留」は常用漢字で、「溜」は旧字体です。当用漢字の制定が1946年です。常用漢字の制定は1981年です。日本最古の蒸溜所である山崎蒸溜所の開所は1923年、余市蒸溜所が1934年です。日本の2大ウイスキーメーカーがこの当用漢字の制定前に開所しているので、「留」の字自体が存在していない訳です。サントリー、ニッカが2番目の蒸溜所となる宮城狭、白州を開所したのがそれぞれ1969年と1973年と当用漢字の制定後に開所していますが、最初の蒸溜所に倣うのは当然の事のように思います。それがデファクトスタンダード(業界標準)となって蒸溜所には「蒸溜所」を使うのが一般的になったのだと思います。
■「whisky」と 「whiskey」のどっち?(「e」の有無)
ウィスキーの英語表記には、「whisky」と 「whiskey」の二通りの綴りがあります。この問題について2つの考えがあるようです。
・1つは単純に地域の言語的規則の問題であり、スペリングは意図する対象者、背景、ライターの個人的な好みによって選択して良いというものです。
・もう1つは、その製品の伝統や精神を守るために綴りには拘るべきというものであり、少なくとも、ラベルに印刷された正しい名前を引用するとき、そこに印字された綴りは変えるべきではないという一般的なルールです。
・whiskeyの綴りは、アイルランドとアメリカ合衆国では一般的ですが、whiskyは、他の全てのウイスキー生産国で使用されています。そのアメリカでも元から使用法が一貫していたわけではなく、新聞のスタイルガイドが導入される前の18世紀後半から20世紀半ばまでは、両方のスペルが用いられていました。1960年代以降、アメリカのライターたちは、アメリカ国内または国外での製造に限らず、穀物由来の蒸溜酒を、whiskeyとして使用するようになりました。ただし、ジョージディッケル、メーカーズマーク、オールドフォレスタ―などの有名なアメリカン・ウィスキーのブランドでは、whiskyの綴りが使用されており、全体を通して見てもwhiskyの使用は少なくありません。
●簡単にいうと以下のような感じです。
・WHISKY(スコットランド由来)
スコッチウイスキー、ジャパニーズウイスキー、カナディアンウイスキーが該当します。
日本のウイスキーは、スコッチウイスキーをお手本にしているので、サントリーやニッカウヰスキーなどのウイスキーも「WHISKY」です。
元々カナダもアメリカもイギリス植民地ですが、イギリスと独立戦争をしたアメリカと違って、カナダは自治領として認められ、現在もイギリス連邦加盟国です。よって、イギリス(正式にはUK、スコットランドもUK)色が強く、スコットランド由来なのだろうと推測します。カナディアンクラブやクラウンローヤルなどのカナディアンウイスキーも「WHISKY」です。
・WHISKEY(アイルランド由来)
アイリッシュウイスキーとバーボンウイスキーが該当します。
ボトルを見ても、一方、ジャックダニエル(バーボン)やクーリー(アイリッシュ)、ジェムソン(アイリッシュ)などは、「WHISKEY」です。
■最古の蒸溜所
各社、自分が最古の蒸溜所だと主張している部分もあるようですが、いずれにしても、現在有名なブランドです。
■世界最古のウイスキー蒸溜所
ブッシュミルズ蒸溜所
「アイリッシュ、スコッチを含めて、全てのウイスキーの蒸溜所の世界最古である」との自己主張です。
1608年、北アイルランドのオールド・ブッシュミルズ蒸溜所は、ウイスキー蒸溜の許可をイングランド王ジェームズ1世から得て操業を開始しました(正式な登録記録は1784年)。同蒸溜所は、世界で最も古く認可されたウイスキー蒸溜所を名乗っています。ブッシュミルズのすべてのボトルに1608が記載されており、「世界最古のウイスキー蒸溜所」という称号を誇りに思っています。
■現存するスコットランド最古の蒸留所
グレンタレット蒸溜所
「スコッチの最古の蒸溜所である」との自己主張です。
設立は1775年、と現存する最古の蒸溜所であることを主張しています。元々はHOSH(ホッシュ)蒸溜所と呼ばれていましたが1875年よりグレンタレット蒸溜所に改名しています。
1717年、密造時代、サロット蒸溜所
1818年、ホッシュ蒸溜所、酒造免許取得
1875年に、グレンタレット蒸溜所へ改名
■スコットランド政府公認蒸溜所第1号
ザ・グレンリベット蒸溜所
最古のスコットランド政府公認蒸溜所(スコッチ)です。政府公認なので、自己主張ではないです。
1824年「ザ・グレンリベット」が史上初のスコットランド政府公認蒸溜所となりました。ジョージ=スミスという造り手によるウィスキー『グレンリベット』の品質の高さは、密造酒ながら英国中で評判になっていました。やがてその品質の高さが認められました。俗説の一つとして、当時のイギリス国王ジョージ4世がスコットランドを訪れた際に、密造だったグレンリベットを飲み、これが税法改正に繋がったというものがあります。
■ウイスキーの定義・種類
■ウイスキーの定義
一般的には、「穀類を原料として、糖化、発酵の後に蒸溜をおこない、木製の樽で貯蔵熟成させてできるお酒」です。
日本の酒税法では、「発芽させた穀類と水、あるいは発芽させた穀類・水で穀類を糖化・発酵させたアルコール含有物を蒸溜したもので、蒸溜の際の溜出時のアルコールが95度未満のもの」とされ、また、「これに法に定められたアルコール等の物品を加えたもの」をいいます。
ただ、「スコッチ」「バーボン」と名乗れる条件などは、原料、製法、熟成年数などが各国ごとに定められています。
■ウイスキーの年数表記
年数表記のルールとして「熟成年数が一番若い原酒の熟成期間を表示する」こととなっています。
これは、輸入ウイスキーも、国産ウイスキーも同じです。公正取引委員会、消費者庁による「ウイスキーの表示に関する公正競争規約」「輸入ウイスキーの表示に関する公正競争規約」に定められています。たとえば、ラベルに「白州10年」と書かれていれば、使われている原酒のなかで熟成年数が最も若いのが10年であることを意味します。つまり、15年物、20年物の原酒が使われている可能性もあります。したがって、ノンエイジの製品にも、10年物や15年物が使われている可能性は十分あります。山崎12年は何年放置しても山崎12年のままなのです。
最近は、世界的な原酒不足もあり、熟成年数を表記しない「ノンエイジ、ノンビンテージ、ノンヴィンテージ、NV」と呼ばれる製品が増えています。ただ、ノンエイジ=熟成されていないウイスキー、でもなければ、原酒のすべてが熟成期間の短いものというわけでもありません。ウイスキーのラベルに表記される熟成年数は、使われている原酒の最低熟成年数を示しています。一般的には、熟年数の長いウイスキーが価格も高くなります。しかし、当然ですが、ブランドや銘柄によって異なります。また、美味しさの感じ方は人それぞれですので、ノンエイジだからといって味が劣るわけではありません。熟成期間が長くなるほど深みのあるコクが増すとはいわれますが、ブランドや銘柄によっても異なりますし、若い(熟年数の短い)ウイスキーを好まれる方もいらっしゃいます。熟成に要する年数は長いほど良いというものではなく、熟成にもピークがあります。保管(保存)されていた環境・状況にも影響されますし、近年では偽造酒も出回っているようです。しかし、古酒や終売したボトルは、正規(メーカー・酒類卸業者)ルートでの入手は不可能ですので、各自で見極めるしかなさそうです。近頃では、偽造防止の施策(ホログラムなど)が施されているボトルも出てきています。
■ウイスキーの色
蒸溜した直後のウイスキーは、無色透明です。これを樽に詰めて貯蔵庫で熟成させます。貯蔵中に、樽材に含まれているリグニンやタンニンなどの成分や、新樽は樽の内側を焼いて(チャー)使うので、それらの影響で次第に琥珀色になっていきます。また、この間に樽材を通じて空気と接触し、香味を作り出していきます。
しかし、すべてのウイスキーではないですが、「スピリッツカラメル(プレーンカラメル)」によって色付けすることは許可されていますので、着色されているウイスキーもあります。特に、ブレンデッドウイスキーや、大量生産されるウイスキーは、色も統一する必要がありますので、カラーリングはウイスキーにとって必要な作業です。あくまでも樽から出た色が弱かった時にカラメル色素で補っています。
■ウイスキーの原料による種類
■モルトウイスキー
麦芽(モルト、通常は大麦麦芽)が原料です。
風味の個性が強いため、ラウドウイスキーともよばれます。
対してグレーンウイスキーはサイレントスキーともよばれます。
・シングルモルト
単一蒸溜所のモルト原酒のみで作られたウイスキー
・ブレンデッド・モルト(ヴァテッド・モルト)
複数の蒸溜所のモルト原酒を混ぜ合わせて製造されたウイスキー
・シングルカスク
1つの蒸溜所の中の1つの樽で製造されたウイスキー
・ピュアモルト
多くの場合はシングルモルトウイスキーと同義です。
複数の蒸溜所のモルトをブレンドしたヴァッテドモルトウイスキーを指す場合もあります。
■グレーンウイスキー
トウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀類が原料です。
ウイスキーの中でもクセが少なく飲みやすいため、サイレントウイスキーとよばれます。
・シングルグレーン
単一蒸溜所のグレーンウイスキーのみで造られたウイスキー
・カフェグレーン
ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所などで造られています。
「カフェ式連続式蒸溜機(カフェスチル)」で蒸溜されているグレーンウイスキーです。「カフェ」とは蒸溜機の種類であり、コーヒーではありません。
■ブレンデッドウイスキー
モルトウイスキー原酒とグレーンウイスキー原酒をブレンドして造られたウイスキーです。
スコッチウイスキー全体の消費量の90%以上を占めているともいわれ、ブランドの数も多いです。ブレンデッドウイスキーは、飲み易くしたり、安価にしたりと改良を加えてウイスキー人気・ウイスキー文化を支えています。最近は、モルトウイスキーが注目を浴びている感じもしますが、ジョニーウォーカーやシーバス、日本では、サントリーの響、オールド、角など多くのブレンデッドウイスキーがあります。一般の酒小売店に並んでいる(安価なもの)多くはブレンデッドウイスキーです。しかし、ジョニーウォーカーブルーラベル、バランタイン、ロイヤルハウスホールドなど、王室御用達や高級で稀少な銘柄も沢山あります。
■ウイスキーの熟成樽の種類
■ウイスキーの熟成樽の多くは再利用(古樽)
ウイスキーの熟成樽は、ワインやシェリー酒など別のお酒の熟成に使用していた古樽をウイスキーの熟成樽として再利用します。その以前に熟成していたお酒の種類よって味わいが大きく変化します。お酒を一度熟成させた樽を再利用することで風味を付与したり、木材の種類によっても香りや味が異なります。樽の大きさや材質も複数あります。
しかし、バーボンやテネシーウイスキーは、新樽であることが法律で定められているため、新樽が使用される場合もあります。スコッチウイスキーは新樽が使用されることは少ないです。バーボンを貯蔵していたバーボン樽をスコッチウイスキーの熟成樽として再利用して、バーボンカスク、バーボンカスクフィニッシュといったウイスキーを造ることもあります。
■樽の大きさ
一般的なバレル樽(約200L)からは、一般的な700mlのボトルは約300本弱しか製造出来ないことになります。「ホグスヘッド樽」は、250Lの樽です。ここでは割愛しますが、他にもいろいろなサイズがあります。
■熟成樽の種類
以前に熟成していたお酒の種類によって、樽の種類も多岐に渡ります。主な種類を下記に上げておきます。
・シェリー樽(オロロソ、ペドロ・ヒメネスなど)
・ワイン樽(ポート、マデイラ、マルサラなど)
・バーボン樽
・ビール樽
・ラム樽
・ブランデー樽
■材料による樽の種類
ウイスキー樽は材料となる木材によって呼称されることもあり、材料によってもウイスキーに付与する風味が異なります。主に下記の3つの分類に分けられます。
①アメリカンオーク樽
②ヨーロピアンオーク樽
③ミズナラ樽(ジャパニーズオーク)
■ウイスキー業界の動向
■上位企業
世界の蒸溜酒(スピリッツ)業界の1位はディアジオ、2位はペルノリカール、3位はサントリー(ビームサントリー)です。
ビームサントリーは、2021年は3位ですが、2022年はデータ開示をしなくなったので、数字上の3位はバカルディ―です。しかし、ビームサントリーは、2022年は、過去最高の売上を更新しています。
ウイスキーブランドでは、上位は、ほぼインディアンウイスキーです。
下記のジョニーウォーカー、ジャックダニエル、ジェムソン、バランタイン、クラウンローヤル以外は全てインディアンウイスキーです。ただ、恐らくインド人しか飲んでいないのではないかというほどよくわからない銘柄です。インドは人口が12億人もいて、更に日本を超える数の中産階級の層がおり、経済成長も毎年プラスです。また、熟成を行っていないので、高アルコールで安いウイスキーを量産しているので消費量が多いということも考えられます。また、インドへの輸入時のお酒の関税が高いので、外国産のお酒は、かなり高価なものになってしまうため、インドの国内産のお酒の消費量が増えているのは当然です。インドは、宗教上、飲酒は禁止されているイメージですが、実際は、ヒンドゥー教やイスラム教ではあまりお酒を飲むことが良いことはされていませんが、インドで約8割を占めるヒンドゥー教では、飲酒自体は禁止されてはいないものの、ヒンドゥー教徒にとって飲酒は「五大罪」のひとつとされており、飲酒は好ましくないものとする価値観が伝統的に強く、公共の場での飲酒は日本よりも限られています。また、1割を占めるイスラム教は、「ハラール食」で飲酒は禁止されています。しかし、2022年のジェトロ(日本貿易振興機構)によると、インドのアルコール消費量は世界第9位で、うちスピリッツ(ウイスキー、ジン、ラム、ウォッカなど)の消費量は中国に次ぐ世界第2位と、世界有数のアルコール消費大国となっています。伝統的にハードリカーの消費が多く、国内市場の9割近くを占めるとされます。2020年のインド内の消費シェアはカントリーリカー(安価な地酒など)が48%を占め、最も多いのはウイスキーです。また近年では、特に都市部の若年層を中心に趣向の幅が広がりつつあるようです。現在は、インド国内の消費用の大衆ウイスキーがほとんどですが、今後は、輸出用の高級ウイスキーにも力を入れてくると思われます。
■新興国
一般的には世界5大ウイスキーが有名ですが、最近では台湾(カバランなど)やインドも含め7大ウイスキーなどと呼ばれる場合があります。他の新興国(ニューワールド)ウイスキーとしてフランス、イタリア、オーストラリア、ドイツ、ウェールズ、フィンランド、スウェーデン、スイス、タスマニア、イスラエルなどで製造されています。
2022年の販売数(統計ポータルサイト「Statista」のデータを参考)
1位 マクドウェルズ 3080万ケース
2位 ロイヤルスタッグ 2710万ケース
3位 オフィサーズチョイス 2490万ケース
4位 インペリアルブルー 2400万ケース
5位 ジョニーウォーカー 2270万ケース
6位 ジャックダニエル 1460万ケース
7位 ジェムソン 1110万ケース
8位 ブレンダーズプライド 950万ケース
9位 バランタイン 920万ケース
10位 エイトピーエム 910万ケース
11位 クラウンローヤル 840万ケース
■ウイスキー業界のM&A
ウイスキー業界だけに限りませんが、M&Aによリウイスキー業界は頻繁に変化しています。
ウイスキー業界は、下記で触れますボトラーズに限らず、蒸溜所の合併・買収などのM&Aも非常に多いです。一部出資を含めると更に多くなります。ある特定の蒸溜所のオーナーが何度も交替していることはざらにあります。
●主なM&Aの事例
①サントリーの傘下には、ビームサントリー(ボウモア蒸溜所、オーヘントッシャン蒸溜所など)があります。マッカランには出資をしていますので、日本国内ではサントリーが販売しています。
②身近なところでは、ニッカウヰスキーは、アサヒビールの完全子会社です。
③世界最大のラム酒ブランドで、カクテルリキュールとしても有名な「バカルディ」は、スコッチのブレンデッドウイスキーのデュワーズなどのブランドを傘下にしています。さらに、オルトモア、ロイヤルブラックラ、アバフェルディなどのウイスキー蒸溜所も所有しており、「蒸溜酒全般を扱うブランド」へと変化しつつあります。
④バカルディ」の所有している「カティーサーク」は、2023年4月にサッポロビールから変更され、アサヒビールが日本国内への輸入販売権を持っています。
⑤「ジャックダニエル」の日本への輸入権もアサヒビールでしたが、2024年3月31日をもって、アサヒビールの所有する「ジャックダニエル」の日本への輸入販売契約は解消し、2024年4月1日からは、米酒造大手ブラウンフォーマンの日本法人が販売することになりました。ブラウンフォーマンは、蒸溜酒とワインのビジネスでは最大手の1つです。ケンタッキー州ルイビルに拠点を置き、ジャック ダニエル、オールド フォレスター、ウッドフォード リザーブ、グレンドロナック、ベンリアッハ、グレングラソー、エラドゥラ、コーベル、シャンボードなど、世界中で非常に有名なブランドを製造しています。
⑥「アーリータイムズ」は、以前アサヒビールが日本への輸入・販売権を所有していましたが、2022年9月から「明治屋」へ変更になっています。
■2台巨頭とサントリー
1位「ディアジオ」、2位「ペルノリカール」です。サントリーが追いかけています。
①ディアジオ
ディアジオ社はイギリスに本社を置く世界最大級の酒造会社で、世界180カ国以上で製品を販売しており、200以上のブランドを保有しています。保有しているブランドには、ウイスキーではタリスカー、カリラ、ラガヴーリン、ベンリネス、ジョニー・ウォーカーなど約30ヶ所の蒸溜所を所有しています。、その他酒類ではギネスビールやスミノフウォッカなど、国際的に有名なものが多くあります。ディアジオ社が製造する代表的なスコッチウイスキーであるジョニー・ウォーカーは、世界200カ国以上で年間1.2億本以上出荷されています。
さらに、「LVMH モエヘネシールイヴィトン」と共同で、「MHD モエ・ヘネシー・ディアジオ」を設立し、アードベッグ、グレンモーレンジ―のウイスキー蒸溜所やドンペリ、モエ・エ・シャンドンなどのシャンパーニュも傘下に入れています。
②ペルノリカール
ペルノ・リカールは世界第2位のワイン&スピリッツメーカーであり、スピリッツとワインの世界市場におけるリーディングカンパニーです。世界のトップ100スピリッツブランドのうち17のブランドを保有し、160カ国に240以上のプレミアムブランドを販売する業界有数の著名で幅広い商品群を有しています。ペルノ・リカールの商品群には、アブソルート(ウオッカ)、リカール(パスティス)、バランタイン、シーバスリーガル、ローヤルサルート、ザ・グレンリベット(スコッチウイスキー)、ジェムソン(アイリッシュウイスキー)、マーテル(コニャック)、ハバナクラブ(ラム)、ビーフィーター(ジン)、マリブ(リキュール)、メゾン マム、ペリエ ジュエ(シャンパン)など数多く保有しております。
「ザ・グレンリベット蒸溜所」を始め、ロングモーン、ストラスアイラ、など10以上の蒸溜所やブランドを傘下にしています。
③サントリー
巨大ブランド2社を追いかけています。2014年サントリーは、「ビーム社」を1兆6500億円で買収し、「ビームサントリー」を設立しました。これによって、ジムビーム、メーカーズマーク、ブッカーズ、などなどのブランドを傘下にしました。
それまでサントリーHDは、飲料部門で2009年に仏飲料大手、ジュースで有名なオランジーナ・シュウェップスを約3000億円、13年には、日本では馴染みが薄いが、英国では高いシェアを持つ英グラクソ・スミスクライン(GSK)の飲料部門(飲料ブランド)「ルコゼード」と「ライビーナ」を2100億円で相次いで買収しました。半面、蒸溜酒分野では英国のスコッチブランドなど中小メーカーの買収にとどまっていました。しかし、世界の蒸溜酒市場はディアジオ、ペルノ・リカール、バカルディ・マルティーニなど有力メーカーによる寡占化(「少数の企業」が生産や販売市場を支配している状態)が進んでおり、ブランド力が販売を大きく左右する同市場では、中小メーカーの買収だけでは存在感を高められないとの判断で、「ビーム社」の買収に至ったようです。実際は、買収を仕掛けたのは、当時、サントリーの会長兼社長の佐治信忠氏です。狙いは、創業者の鳥井信治郎の「国産のウイスキーを世界に」という夢の実現でした。現段階では、2014年の買収以降、確実に売り上げを延ばし、2022年は、過去最高の売上を更新しており、「成功事例」として評価されています。
■業界最大手のDIAGEO(ディアジオ)
■DIAGEO(ディアジオ)
ここでは、業界最大手のディアジオについて、少し触れておきます。ペルノリカールについては、「蒸溜酒のお勉強」のページで触れています。
ディアジオ(英: Diageo plc)は、ギネス社と世界最大級の食品会社であるグランドメトロポリタン社の合併により、1997年に誕生したイギリスの酒造企業です。本社所在地はロンドンです。社名のディアジオとはギリシア語の「dia(=day)」と「geo(=world)」の合成語で、「いつでも、どこでも」同社の製品を身近に親しんでもらおうという意味が込められているのだそうです。
その前身である「ユナイテッド・ディスティラリーズ(UD)社」は、1987年「ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド(DCL)」がギネスグループに買収され、ギネスの傘下となりました。
「ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド(DCL)」は、1877年に、ローランドのグレーン蒸溜所であるカンバス(キャンバス)、キャメロンブリッジ、カースブリッジ、グレノキル(グレンオーキル)、カークリストン、ポートダンダスの6社のグレーン・ウイスキーの蒸溜所が共同で設立しました。これらのうち、キャメロンブリッジ以外はすべて閉鎖となっています。キャンバス、カースブリッジ、ポートダンダスは、ボトラーズを含めて、まだ市場にボトルが残っています。
1920年以降、ブキャナン(Buchanan)、デュワー(Dewar、現デュワーズ、UDがディアジオになった時にバカルディ―へ売却)、ヘイグ(Haig)、ハイラムウォーカー(Hiram Walker)、ホワイトホース(White Horse)の蒸溜所が参画しました。1925年には、ジョンウォーカー&サンズ社(1820年創業、ジョニーウォーカー)が傘下に入りました。経営が傾きかけた蒸溜所を次々と買収し続けため、「ディスティラリーズ・カンパニー・リミテッド(DCL)」はスコッチウイスキー界では知る人ぞ知る最大規模の会社となりました。さらに1930年代までに多くの蒸溜所を買収して急速に成長しました。大小合わせて、多くの蒸溜所やブランドが、M&A(合併・買収)を繰り返してきているため、全てに触れるのは困難ですので、ご興味がありましたら、お調べ下さい。
例えば、その後も、1985年に、アーサー・ベル&サンズ社(1825年創業、ベルズ、インチガワ―、ブレアアソール、カリラ、ダフタウンなどを所有)がギネス社に買収されます。そして、1987年に、「ディスティラリーズ・リミテッドカンパニー(DCL)」とギネス社のグループのアーサー・ベル&サンズ社が合併し、「ユナイテッド・ディスティラリーズ(UD)」となりました。
1962年には、日本ではマイナーではありますが、世界市場、特にアメリカ市場では売上上位にランクされる「J&B」を有するジャステリーニ&ブルックス社(1749年創業、イギリスのロンドン、J&Bを所有)とW&Aギルビー社(1857年創業、イギリス、ワイン商、1887年にグレン・スペイ蒸溜所、1895年にストラスミル蒸溜所、そして1904年にはノッカンドウ蒸溜所を買収)と合併してインターナショナル・ディスティラーズ・ヴィントナーズ社(IDV)を設立しました。
1972年にホテル経営とケータリングビジネスの最大手であるグランド・メトロポリタン・グループに買収され、その傘下に入ります。
UD社は、グランドメトロポリタン社傘下のインターナショナル・ディスティラーズ&ヴィントナーズ(IDV)社と合併、以降「ユナイテッド・ディスティラーズ・アンド・ヴィントナーズ(UDV)」に社名変更しました。しかし、その合併は独占禁止法に抵触するとの判断が下され、いくつかのブランドを売却するよう命じられます。これによりデュワーズ社と傘下の4つの蒸溜所アバフェルディ、ロイヤルブラックラ、クレイゲラキ、オルトモーアがバカルディ社に売却されました。それ以降バカルディ社はオフィシャルボトルをリリースしていませんでしたが、2016年に、アバフェルディ、オルトモア、クライゲラヒ、デュベロン(マクダフ)、ロイヤルブラックラの6種類のシングルモルトによる「ラスト・グレート・モルト」シリーズが発売されましたが、その後終売となっているものもあります。
そして1997年にUD社の親会社のギネスグループとグランド・メトロポリタン・グループが合併し「ディアジオ(Diageo)が誕生し、同社は世界売り上げNo.1ともいわれる(見方によって異なります)の「ジョニーウォーカー 赤ラベル」および「J&B」を抱える巨大企業へと進化を遂げました。
■MHDモエ・ヘネシー・ディアジオ株式会社
この他、ディアジオはLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)との合弁事業として「MHDモエ・ヘネシー・ディアジオ」を展開しています。1988年にギネス、LVMH、ジャーディンマセソン(アジア拠点に事業展開していたイギリスの商社、前身は東インド会社)の3社合弁として営業を開始しました。2004年にディアジオ・LVMHの2社合弁となり、2009年に現在の商号となりました。
前身である「ジャーディン・ワインズ・アンド・スピリッツ社」は、仏モエ ヘネシー社(LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのワインズ&スピリッツ事業)、英ディアジオ社(旧英ユナイテッド ディスティラーズ&ヴィントナーズ社)、英ジャーディンマセソン社の3社による合弁会社として、1988年に営業を開始いたしました。英ジャーディンマセソン社はアジアをベースにビジネスを展開していた商社で、1859年に日本で初めての事務所を横浜に設立しました。ここが「MHDモエヘネシーディアジオ」の歴史の原点です。1859年といえば、日英修好通商条約(日米修好通商条約もほぼ同時期)が発効された時期になります。安政の開国(鎖国の終了)が、1854年なので、開国後、間もなくということになります。
ジャーディン・ワインズ・アンド・スピリッツ株式会社は、2004年1月1日付で社名を変更し、ジャーディンマセソン社が株主から退き、ディアジオ社とモエヘネシー社が各50%株主の合弁会社となることから、社名を「MHDモエヘネシーディアジオ(Moet Hennessy Diageo)」に変更しました。
ジャーディン・マセソン・ホールディングスは、香港にヘッドオフィス(登記上の本社はバミューダ諸島・ハミルトン)を置くイギリス系企業グループの持株会社で、アジアを基盤に世界最大級の国際コングロマリット(複合企業)として影響力を持っています。
前身は東インド会社で、元は貿易商社です。1832年、スコットランド出身のイギリス東インド会社元船医で貿易商人のウィリアム・ジャーディンとジェームス・マセソンにより、中国の広州(沙面島)に設立されました。中国語名は「怡和洋行」で、当時、広州は広東システム体制下、ヨーロッパ商人に唯一開かれた貿易港でした。
設立当初の主な業務は、アヘンの密輸と茶のイギリスへの輸出でした。香港上海銀行は、ジャーディン・マセソンなどの英国貿易商らが、香港で稼いだ資金をイギリス本国に送金するために設立された銀行でした。
■LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)
LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、フランス・パリを本拠地とするコングロマリット(多業種巨大企業)です。ご説明するまでもなく、世界最大のファッション業界大手企業体とされています。同様の企業体として、ケリング(グッチ、バレンシア、サンローランなど)、リシュモン(ダンヒル、ランセル、クロエなど)などが挙げられます。
1987年に、ルイ・ヴィトンとモエ・ヘネシー(モエ・エ・シャンドン、コニャック「ヘネシー」を販売)の両社が合併して誕生しました。現在はフランスやイタリア、スペインなどのヨーロッパを中心に60近くの高級ブランドを持つほか、免税店のDFSグループなどを傘下に収めています。
日本法人は、その事業内容によって、「LVJグループ株式会社 ルイ・ヴィトンジャパンカンパニー」、「LVMHウォッチ・ジュエリージャパン株式会社」、「LVMHフレグランスブランズ株式会社」に分かれています。酒類のブランドは、ディアジオとの合弁で設立された「MHDモエ・ヘネシー・ディアジオ株式会社」が取り扱っています。MHDモエ・ヘネシー・ディアジオ株式会社では、アードベッグ、グレンモーレンジ―、タリスカー、オールドパーなどのウイスキー、ブランデー(コニャック)のヘネシー、シャンドンなどのワイン、ドンペリニオン、ヴーヴ・クリコ、モエ・エ・シャンドンなどのシャンパン、などのブランドを有しています。
■ディアジオジャパン株式会社
また、ディアジオジャパン株式会社も存在しており、1998年にギネス日本駐在事務所として、ギネスのマーケティング販売戦略を開発するためにディアジオPLCの100%子会社として設立されました。2002年に事務所名をディアジオジャパンに変更しました。2003年にスミノフアイスの販売を開始しました。2004年に法人登録が完了しました。ギネスビール(2023年現在の販売元はキリンビール、以前はサッポロビール)を始め、ジョニー・ウォーカー、ホワイトホース、I.W.ハーパー、オールド・パー、ギネス、スミノフアイス、キャプテン・モルガン、シロック、ロイヤル・ロッホナガー、ザ・シングルトン・グレンオードなどの主要ブランドを、自社の営業部に加え、サッポロビール、麒麟麦酒(初代、現キリンホールディングス)、日本酒類販売、メルシャン、リードオフジャパン、明治屋など幅広いビジネスパートナーと協力して販売していました。
2009年4月、麒麟麦酒(二代目、以下キリン)とディアジオによる合弁企業「キリン・ディアジオ株式会社」が設立され、5月にサッポロとの販売協力関係を解消、同年6月1日から業務を開始しギネスならびにスミノフやジョニー・ウォーカー、ホワイトホース、I.W.ハーパー、ベイリーズなどの発売元が順次、キリンに変更されました。しかし、2021年4月、キリンとの合弁が解消され、キリン・ディアジオで取り扱っていたブランドはディアジオジャパンに移行、キリン・ディアジオは「ディアジオジャパンアドミニストレーションサービシーズ株式会社」に商号変更されました。ただし、キリンとの業務提携、および輸入代行に関しては2023年現在もこれまで通り継続しています。また、ディアジオグループでは定期的にポートフォリオ戦略(商品の組合せ)の見直しを行っており、MHDモエヘネシーディアジオ株式会社及びキリンビール株式会社などが販売するブランドを変更する場合があります。
例えば、2023年7月では、「ジョニーウォーカー ブルーラベル」「ラガヴーリン8年、16年」「モートラック12年、16年」などが、MHDモエヘネシーディアジオから、ディアジオジャパンへ変更になりました。さらに、2023年10月には、「ジョニーウォーカー18年」「ジョニーウォーカーグリーンラベル15年」「ジョニーウォーカーゴールドラベル リザーブ」が、キリンからディアジオジャパンへ変更となりました。
■ギネス社
ギネス(Guinness&Co.) は、1759年にアーサー・ギネスが創業したビール醸造会社です。
1759年以来、アイルランド・ダブリンのセント・ジェームズ・ゲート醸造所に生まれた「ギネス」(Guinness)あるいは「ギネス・ビール」として広く知られる黒スタウト(ビールの一種,具体的にはドライスタウト)を生産しています。
創業者のアーサー・ギネスは、同年1759年に当時使われなくなっていたこのセント・ジェームズ・ゲート醸造所を年45ポンドの対価で向う9000年間の契約で借り受けています。 今日ではギネスは認可に基づき世界各地で生産されていますが、その生産されるビールはあらゆる報告から鑑みればそれぞれ著しく異なっています。一例として、ナイジェリアで生産されているギネスは、アフリカの気候下で流通・保存されるためにアルコール分が8%と非常に高くなっています。これは近年になってアフリカへの旅行者を中心に有名になり「アフリカのギネス」という触れ込みで本国アイルランドなどに逆輸入・販売されています。なおロンドンのギネス醸造所は2005年に閉鎖されました。
1997年末にグランドメトロポリタン社と合併してディアジオ社を形成し、今はディアジオ社のビール部門という扱いになっています。日本国内でのビールの販売権はサッポロビールが2009年6月まで持っていましたが、2008年11月にディアジオ社と関係の深い麒麟麦酒(新、二代目、キリンビール、旧麒麟麦酒はキリンホールディングスへ社名変更)が販売権を取得したと発表、2009年6月からキリンビールが販売を行なうようになりました。
■グランドメトロポリタン社
グランドメトロポリタン社(Grand Metropolitan PLC、PLCは、Public Limited Company、日本の株式会社に相当)は、1934年設立のイギリスの複合企業です。酒類の醸造販売、ホテルなどの経営、乳製品その他食品の製造販売などを手がけ、全世界にパブ、レストラン、ホテルなどを多数有しました。酒類ではJ&B(スコッチ)、スミノフ(ウォッカ)などのブランドを扱いました。1989年にアイスクリームのハーゲン・ダッツ、ハンバーガーのバーガー・キングを買収しました。当時の地域別売り上げは国内およびアイルランドが6割のほか、北アメリカが3割を占め、アメリカでは子会社を通じてペットフード、コンタクトレンズなども扱っていました。1997年、イギリスの酒造メーカーであるギネスと合併し、社名をディアジオ(Diageo)としました。
■「ユナイテッド・ディスティラリーズ(UD)社」時代
「ユナイテッド・ディスティラリーズ(UD)」は、スコットランドで最多の蒸溜所を傘下に収めている酒類製造業者で、最盛期では36の蒸溜所を所有していました。
「ユナイテッド・ディスティラリーズ(UD)」時代には、現在でも有名なシリーズがあります。
「花と動物シリーズ」と「レアモルトウイスキー」シリーズの2シリーズが特に有名で、「花と動物シリーズ」はスタンダード品、「レアモルトシリーズ」はプレミアム品という位置づけです。当時、UD社が所有する蒸溜所の多くは、生産量のほぼすべてがブレンデッドウイスキーに使用されていました。そこで、ウイスキーファンと蒸溜所のスタッフの両方にこれらのウイスキーをシングルモルトの形で試す機会をつくろうとして、ボトリングされました。
「花と動物(フローラ&ファウナ)」という名前は、地元の動物や植物を描いたラベルの画像にちなんで、ウイスキー作家の故マイケル ジャクソン(ミュージシャンとは別人です)によって造られました。シリーズの正式名称ではありませんでしたが、「花と動物」という名前が定着し、今日ではシリーズを説明するために明確に使用されています。
■UD社の有名シリーズ
UD社のシリーズは、現在もボトルが市場で流通しており、貴重なボトルも多いので、触れておきます。
最盛期には36ヵ所もの蒸留所を所有したとされるUD社がリリースした有名なシリーズには、「花と動物シリーズ」、「レア・モルト・セレクション」、「クラシック・モルト・シリーズ」、「ディスティラリーズ・エディション」の4つがあります。ユナイテッド・ディスティラリーズには、一つの銘柄に対してさまざまなシリーズがあります。
■花と動物シリーズ
「ユナイテッド・ディスティラリーズ(UD)」で一番有名なのがこの花と動物シリーズです。スタンダード品という位置付けで、各蒸溜所のハウススタイル(味わい)の特徴がしっかり出ているモルトということでも知られています。
ラベルにはその名の通り、花や動物が描かれており繊細なデザインも特徴的です。種類は以下の27種です。
アバフェルディ、インチガワー、オスロスク、オルトモーア(オルトモア)、カリラ、クライヌリッシュ、クレイゲラヒ、グレンエルギン、グレンオード、グレンスペイ、グレンダラン、グレンロッシー、ストラスミル、スペイバーン、ダフタウン、ダルユーイン、テナニャック(ティーニニック)、バルミニック、ピティヴェアック(ピティヴァイク)、ブラッドノック、ブレアアソール(ブレアソール)、ベンリネス、マノックモア、モートラック、リンクウッド、ローズバンク、ロイヤルブラックラです。
またユナイテッド・ディスティラリーズは多くの蒸溜所を買収していた一方で、閉鎖した蒸溜所もあります。花と動物シリーズのローズバンクやブレアアソール(ブレアソール)もその一つです。現在では入手困難となっています。
■UDレアモルト・セレクション
おおむね20年以上の長期熟成したウイスキーをそのまま樽出しした原酒がこのレアモルトです。UDレアモルト・セレクションと呼ばれています。花と動物に並びユナイテッド・ディスティラリーズで有名なボトルコレクションの一つでもあり、プレミアム品の位置付けです。種類は以下の30種です。
インチガワー、オルトモーア(オルトモア)、カードゥ、カリラ、クライヌリッシュ、クレイゲラヒ、グレンオード、グレンダラン、グレンユーリーロイヤル、グレンロッキー、コールバーン、セントマグデラン、ダフタウン、ダラスドゥー、ダルユーイン、テナニャック(ティーニニック)、ノースポート、バルミニック、ヒルサイド、ブローラ、ベンリネス、ベンローマック、ポートエレン、マノックモア、ミルバーン、モートラック、リンクウッド、ローズバンク、ロイヤルブラックラ、ロイヤルロッホナガーです。
■クラシック・モルト
上述のレアモルト・セレクションのオフィシャルボトル扱いとなるのが、こちらのクラシック・モルトです。ブレンデッドウイスキーが主流となっているスコッチウイスキーですが、シングルモルトであるクラシック・モルトはウイスキー初心者が地域の特有の味わいを楽しむためにもおすすめのシリーズです。
スコッチウイスキーの地域ごとの代表的なものがクラシック・モルト・シリーズにあげられています。具体的にはタリスカー、グレンチキー、オーバン、クラガンモア、ダルウィニー、ラガヴーリンの6種類です。
■ザ・ディスティラー・エディション
ザ・ディスティラー・エディションは、ディアジオ社所有の蒸溜所の中から3か月から半年ほど、元の樽とは異なるシェリーやワインの熟成などに使用された樽でカスクフィニッシュでボトリングされた商品で、クラシック・モルトの二段熟成であるダブルマチュアード版です。
■ボトラーズ
■ボトラーズ(インデペンデントボトラー、独立系瓶詰業者)
スコッチウイスキーのボトルをみていると、「ボトラーズ」とか「インデペンデントボトラー」というものに出くわします。具体的には、本来のウイスキーの蒸溜所名や銘柄名以外にも「何かロゴやブランド名らしきもの」が印刷されているラベルのボトルです。数としてはかなりあります。ボトラーズというのは蒸留所ではありません。ウイスキー専門の業者で、蒸留所からウイスキーの樽を購入して自分たちでボトリングし、自分たちのブランド名でウイスキーを販売します。蒸留所とは違うこのボトラーについても触れてみます。ただ、オフィシャルボトルとしては販売せれておらずに、ボトラーズからしか販売されていない蒸溜所のウイスキーもあったりします。結構ややこしいので、簡単に触れておきます。
●(例)ゴードン&マクファイル
下記にも出てきます「ゴードン&マクファイル(Gordon&Macphail)」というインディペンデントボトラーは、100年以上の歴史があり、数々の有名なシリーズやボトルもありますが、実は、「ベンロマック蒸溜所」を所有しており、新たに「ケアン蒸溜所」を新設しました。そして、2023年7月に、「2024年以降、GM社は第三者の所有する蒸溜所が造るニューメイクスピリッツの樽詰めを停止します。」と発表し、「GM社は、これから数十年をかけてゆっくりと、インディペンデントボトラー(独立瓶詰業者)としての、その歴史に幕を下ろし、自社蒸溜所でのシングルモルト製造へ軸足を移していくこととなりました。」と発表しています。
つまり、ボトラーズ会社が蒸溜所を傘下に収めたり、新たに蒸溜所を作ったりと、完全に区別はできなくなってきています。
また、オフィシャルボトルを販売せずに、ボトラーズ経由でしか販売していない蒸溜所もあります。それも、たまにオフィシャルボトルを出してみたり、出さなかったりと、年代によってもまちまちで、全てを把握するのは難しいです。
■ボトラーズの手法
「ボトラーズは、再販してるだけじゃないか」、と思われるかもしれませんが、ボトラーズはそれぞれ独自のこだわりを持ってウイスキーに変化を加えてきます。
例えば「ゴードン&マクファイル」は、蒸溜所からニューポット(熟成前のウイスキー)を購入し、自社の倉庫にある樽に詰めて熟成させます。また他のボトラーズでは熟成されたウイスキーを購入し、別のタイプの樽に詰め替えてフィニッシュさせます。このようにさまざまな手法でウイスキーを産み出しています。
●ボトラーズの手法例
・自社の樽で熟成させる
・違うタイプの樽でフィニッシュさせる
・オフィシャルにない熟成年数でボトリングする
・カスクストレングスでボトリングする
・他のウイスキーと調合してブレンデッドにする
・どこの蒸溜所のウイスキーを使ったのかを内緒にして販売する(シークレットボトリングと呼ばれる)
・容量を変える
・ラベルで遊ぶ
など唯一無二性、希少性、実験性、ユーモアなどがボトラーズによって高められ、ウイスキーの多様性を生み出しています。
■有名なボトラーズ
数あるボトラーズの中で、よく聞く名前をピックアップしました。
●ダグラスレイン
●ハンターレイン
●ケイデンヘッド
●コンパスボックス
●ザット・ブティック-Y・ウイスキーカンパニー
●ウィームス
●ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS)
●アデルフィ
●マーレイ・マクダヴィッド
●ゴードン&マクファイル
●レスト&ビー・サンクフル
●レディ・オブ・ザ・グレン
●クラクストンズ
●シグナトリー
■日本のボトラーズ
●ウイスキーミュウ(小学館、アニメラベル)
●T&T TOYAMA(若鶴酒造・三郎丸蒸留所 稲垣貴彦氏とモルトヤマ 下野孔明氏)
●ウイスキペディア(BSフジ、ボトラーズというよりは、蒸溜所とのコラボ商品)
※コラボ商品となると、「酒類販売の信濃屋」「名古屋・伏見にあるBAR BARNS」などからも限定品で出ています。
■ボトラーズのウイスキーボトルの表記
●ボトラー名 + 蒸溜所名
ボトラーズのボトル表記は、ボトラー名 + 蒸溜所名で、「ダグラスレイン グレンリベット12年」などとなります。ただ、それだけではなく、以下のようにインデペンデントボトラーの中でさらにシリーズがあることも多いです。
「ダグラスレイン」社の、「オールドパティキュラー」シリーズの、「グレンロセス12年」の表記は、下記のようになります。
・ダグラスレイン オールドパティキュラー グレンロセス12年
他にも、下記以上に把握できないほど多くのボトルがあります。
・シグナトリー アンチルフィルタードコレクション グレンリベット11年
・ケイデンヘッド オーセンティックコレクション ミルトンダフ12年
●ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS)の表記
SMWSは、ちょっと違います。先入観なくウイスキーを楽しんでもらいたいとの思いから、蒸溜所名ではなく、蒸溜所をコードで表しています。そのため、ボトルには、コードしか表記がありません。ネットなど調べれば、コード番号に対する蒸溜所が出てきますので、お調べ下さい。ただ、適時新しい蒸溜所が追加されています。
例えば、コードNO.1は「グレンファークラス」、コードNO.2は「ザ・グレンリベット」、コードNO.3は「ボウモア」などです。約200種類のコードNOがあります。
■ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS)の概要
当店も会員ですので、もう少し触れておきます。以下、SMWSのHPからの一部抜粋です。
・ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ』(SMWS)は、1983年にエディンバラの古い港町リースで設立されました。愛するウイスキーを仲間同士で分かち合い、認識を深めながら味わっていく、そして、なによりも楽しむために設立された世界で最初のウイスキークラブです。始まりは、創設者のピップ・ヒルズと数人の仲間が、スペイサイドの蒸溜所から一樽を購入し、そのままの魅力的な味わいを分かち合ったことからです。これにより、「熟成されていたままのウイスキーを飲みたい!」という、SMWS設立当初からの方針・理念が生まれ、魅力的なウイスキー体験の幕が開けていきました。 現在は、世界20カ国・会員約35,000人を誇り、SMWS限定の特別なウイスキーを、ともに分かち合っています。
・SMWS会員は、専門のテイスティングパネル(識者)が厳選した、スコットランドをはじめとする150以上の蒸溜所から、市場に出回っていないウイスキーを独占的に味わうことが可能です。15,000以上の樽から厳選した一樽のみを、カスクストレングス(無加水)のまま瓶詰めして、さまざまな種類のウイスキーとして提供しています。さらに、同一デザインのボトルに統一して、ラベルにあえて蒸溜所名を記載せず、SMWSロゴマーク・蒸溜年月・熟成年数・瓶詰年月・アルコール度数・蒸溜所コード・樽番号のみを記載することで、蒸溜所への先入観に捉われることなく、ウイスキー本来の味わいを楽しんでもらいたい想いを込めています。
日本の蒸溜所も増えてきております。
・当店も、数本ございますが、ボトル数も限られており、入手するのは、なかなか難しいのが現状です。ただ、カスクストレングスを由緒正しいボトルで飲んでみたい場合には最高のボトルかと思います。
■オフィシャルボトル
ボトラーズ(インデペンデントボトラー)に対して、「オフィシャルボトル」という言葉を目にすることも多いです。
「オフィシャルボトル」または「オフィシャル」というのは蒸溜所で生産され、その蒸溜所やブランドでリリースされたウイスキーを指します。「オフィシャル」は「公式」の意味なので、蒸溜所公式のウイスキーです。要は通常のウイスキーです。
以下がオフィシャルボトルの一例です。
・ラガヴーリン16年(ラガヴーリン蒸溜所)
・ラフロイグ10年(ラフロイグ蒸溜所)
・スプリングバンク10年(スプリングバンク蒸溜所)
・キルケラン12年(グレンガイル蒸溜所のブランド名)
上記のキルケラン12年を見ても分かるとおり、必ずしも蒸溜所の名前を冠している必要はありません。オフィシャルボトルのポイントは、その蒸溜所でボトリングしたものだということです。
■カスクストレングス・シングルカスク
■カスクストレングス、シングルカスク(バレル)
ウイスキーの中には、「カスクストレングス」「シングルバレル」と表記された銘柄(ボトル)も多くあります。
蒸溜所が、イベント(展示会やコラボなど)などのために、一樽だけを瓶詰して数量限定で販売・提供したりする場合もありますし、ボトラーズや蒸溜所が、一樽だけを瓶詰して数量限定で販売する場合もあります。
基本的に、カスクストレングスのウイスキーは、樽ごとに瓶詰されるので、少量生産(スモールバッチ)です。「バッチ」の意味は、一束、一群などのように1単位の意味で、ウイスキーの場合には、1樽を意味する場合があります。ただ、「スモールバッチ」という言葉に法的な定義はありませんが、一般的には、「少量限定生産のウイスキー」という意味で用いられることが多いようです。
そのため、ボトルにはバッチ(ロットナンバーのようなもの)がつけられていて、リリース(販売する樽)ごとに度数や味が微妙に違ってきます。カスクストレングスのウイスキーには、「スモールバッチ」「バッチナンバー」「ロットナンバー」が表記されている場合がほとんどです。
カスクストレングスは、マニア向けのウイスキーといえます。普段、楽しんでいるウイスキーが、どのように調整されて瓶詰めされているか、その過程を実感できる楽しみもあります。
■カスクストレングス(アルコール度数の意味)
「カスク」とはウイスキーを熟成させる木製の樽のことです。「バレル」とはウイスキーの熟成に用いられるカスク(木製の樽)として多く使用される大きさ(酒類の貯蔵用の場合は約200L、国や地域、用途などで多少異なります)です。他にも、ホグスヘッド(約250L)、パンチョン(約300~500L)、ドラム(約650L、日本のドラム缶は約200L)など数種類の大きさがあります。「ストレングス」とは「強さ」を意味しますが、ウイスキー用語ではアルコールの強さ、すなわちアルコール度数のことです。
よって、「カスクストレングス」とは「樽のままのアルコール度数」のことです。樽のなかで熟成のピークを迎えたウイスキーを、そのまま瓶詰めする際のアルコール度数を意味しています。
よく「ウイスキーは生き物」といわれるように、ウイスキーの品質や味わいは、樽内で熟成されるうちに変化していき、カスクストレングスは樽ごとにそれぞれ異なります。
同じ蒸溜所で、同じ時期に造られたウイスキーであっても、1樽ごとでそれぞれ異なってくるものです。造り手が選び抜いた、単一の樽からのみ瓶詰めした「シングルカスク(単一樽)」が珍重されるのはそのためです。
アルコール度数も同様で、同一の蒸溜所で、同時期に造られたウイスキーでも、カスクストレングス(樽の度数)は樽ごとにそれぞれ異なります。シングルカスク(単一樽)ではなく、大量生産する場合などは、複数の樽を調合・調整・加水・瓶詰などを行ない、品質を安定化・統一化させて出荷します。最終的に各社のブレンダー(機械ではなくて人です)の味覚を頼りに行なわれます。各社のブレンダー(チーフブレンダー、マスタブレンダー)は、ウイスキーの味や風味を決めるなど、その会社の重要なポジションです。サントリーの初代マスターブレンダーは、創業者の「鳥居信治郎」で、ニッカウヰスキーの初代ブレンダーは、やはり創業者の「竹鶴政孝」です。そのブレンダーにより造られたウイスキーを、ブレンダーに敬意を表して、最初の一口は、そのままストレートで味わってみてはいかがでしょうか?
■カスクストレングス(無加水の意味)
「カスクストレングス」について調べてみると、先ほどの定義とは異なる説明がされている場合もあります。
「カスクストレングス」は、「樽から出されたままのアルコール度数で、加水されずに出荷されるウイスキー」というように、ウイスキーの分類上の用語としても用いられます。もともとの「カスクストレングス」の意味が転じたものと考えられますが、どちらを意味しているのかややこしいため、「カスクストレングス」と「カスクストレングスのウイスキー」と使い分けている場合もあります。
■カスクストレングスのウイスキーが珍重される理由
カスクストレングス(樽そのまま)のウイスキーは、「至高」とされるシングルカスク(単一樽)以上にマニア向けのウイスキーといえます。一般に、ウイスキーは瓶詰めされる前に、複数樽の原酒からブレンドしたり、加水してアルコール度数を下げたりと、飲みやすくなるよう調整されます。カスクストレングスの場合は、こうした調整がなく、原酒そのままの味わいとアルコール度数で供給されます。まさに、「何も足さない」、「何も引かない」ウイスキーの楽しみ方が、カスクストレングスです。
■「カスクストレングス=シングルカスク」ではない?
カスクストレングス(のウイスキー)の説明として、「シングルカスクを加水せずに瓶詰めしたウイスキー」というのもありますが、一方で、「カスクストレングスも複数樽の原酒を混ぜる場合がある」との説明もあります。
先述したように、ウイスキーのアルコール度数は樽ごとに異なります。複数樽から混ぜるということは、異なる度数の原酒を混ぜることになり、「樽のままのアルコール度数」という定義からすれば、後者の説明には違和感があります。
ただし、カスクストレングスはシングルカスクやシングルモルトと同様、法律で明確に定義されているわけではありません。「樽のままの原酒に加水していない」との理由で「カスクストレングス」を名乗っても、決して間違いとはいえません。細かな定義にとらわれるより、レアなウイスキーならではの個性をたのしんで頂いたほうがよいかもしれません。
■カスクストレングスのアルコール度数は60度近くに
カスクストレングス(のウイスキー)は、樽内で熟成された原酒に加水などの調整を加えてないため、一般的なウイスキーよりもアルコール度数が高くなります。市販のウイスキーでは、40~43度ほどに調整されるのが一般的ですが、カスクストレングスの場合、もちろん樽ごとによりますが、60度近くになる場合もあります。
■カスクストレングスは水との変化をたのしもう
カスクストレングスの魅力は、樽のままの原酒そのものの味わいにありますので、「何も加えずにストレートでたのしみたい」という方、「度数の強いウイスキーに慣れている人」なら、アルコールのダイレクトな刺激を楽しめるかと思います。
「お酒に強くない」という方には、少量の水や氷で割ると多少飲み易くなります。少しずつ水を加える度に味見をして、香りや味の微妙な変化をたのしんでください。